若田さんは講演で、宇宙ステーションの目的は、宇宙の環境を使って色々な実験や観測をすることで、宇宙飛行士の仕事は「地上にいる科学者の目となり手となって、様々な実験をすること」とだと述べた。
また、日本はISSに物資を運ぶ「こうのとり」を日本企業約400社の協力により開発した。こうのとりは今や6トンの物資を運ぶことができる。油井さんは今年8月、ロボットアームを巧みに操作し、こうのとりをキャッチした。
既に、ロシア、アメリカに次ぎ、日本人宇宙飛行士の宇宙総滞在期間は世界3位となっており、若田さんは日本人宇宙飛行士の中でISS滞在の最長記録を持っている。若田さんはISSに2009年に137日間滞在した際のことを振り返り、「人類世界最長の宇宙飛行記録をもっている船長のゲンナージー・パダルカさんからは、長期滞在のテクニック、国際的な仲間たちをいかにまとめていくか等、本当にたくさんのことを学びました。」と述べた。その次のフライトでは、若田さん自身が日本人初のISS船長に抜擢された。若田さんは、日本が「きぼう」や「こうのとり」でのミッションを着実・正確にこなしてきたことが、日本への信頼につながり、日本人に船長をさせてもよいという流れにつながったのではないかと述べた。
若田さんは、ロシアとアメリカの宇宙服の違いについても教えてくれた。アメリカの宇宙服はヘルメット・上半身・下半身の3つにわかれており、一人で着脱できない。ロシアの宇宙服は全てがつながっていて背中にドアがついているので、一人で着ることができる。この点ではロシアの宇宙服の方が便利だが、ロシアの宇宙服には高い圧力がかかっているため、着心地がごわごわしているという。ロシアの宇宙服の内部には空気を循環させるファンが2つついているので、1つ壊れても大丈夫だということだ。
宇宙空間では水はとても貴重だ。尿や汗などをリサイクルし飲料水に変えるシステムが整っている。若田さんは「宇宙では、昨日のコーヒーが明日のコーヒーになるんです。これが究極のリサイクルですね」と述べ、会場を笑いの渦に巻き込んだ。