北朝鮮の核政策と人事:武貞教授「対日外交の優先順位は下がっている」

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拓殖大学大学院特任教授の武貞秀士氏 - Sputnik 日本
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北朝鮮の新たな外相に、李容浩外務次官が任命された。核問題を巡る6カ国協議の首席代表を務めてきた李容浩氏。対米外交に長く携わってきた人物だ。北朝鮮ではこのところ、人事に関する話題が豊富だ。北朝鮮では今月6日から朝鮮労働党第7回大会が行われていたが、その際にも人事に注目が集まっていた。朝鮮半島の問題に詳しい拓殖大学大学院・武貞秀士特任教授は北朝鮮指導部の人事について次のようにコメントしている。

武貞教授「金正恩第一書記は労働党委員長という新設されたポストにつきました。党の最高位であり、金日成の最初のポストである『中央委員会委員長』を意識したポストです。また、党中央委員会政治局常務委員として崔竜海党書記と朴奉珠首相が新たに選出されて、5人体制になりました。軍、党、経済、外交の責任者をバランスよく常務委員にしたのです。そして党中央委員の129人の一人に、金正恩氏の実妹である金与正・党副部長を選出し、党の行事の責任者である妹をさらに重要な委員のメンバーにしました。これで金与正氏はこれまで以上に重要な行事や会議を取り仕切ることになります。」

核問題を長く担当してきた李容浩氏の外相起用は、どのような意図をもつのか。第7回党大会で全会一致で採択した「活動総括報告」を見てみると、「わが国は、侵略的な敵対勢力が核で自主権を侵害しないかぎり、先に核兵器を使用しないだろう」という文言がある。相手が核兵器を使用しなければ、北朝鮮は核兵器を使用しないという宣言だ。武貞教授によれば、これは注目に値するものの、表面的なアピールにすぎないという。

武貞教授「今年3月、北朝鮮は韓国で始まる米韓合同軍事演習について『実施するなら米韓両国に無差別の核攻撃を実施する』との談話を発表しました。核の先制使用を発表してからわずか2カ月で、核兵器の先制不使用を明らかにしたことは注目に値します。ロシアも米国も『核の先制不使用』とは言っていません。中国だけが『核の先制不使用』を宣言した国家でした。

ただし、『自主権が侵害されないかぎり』という前提があります。北朝鮮はこれまで、在韓米軍が韓国に駐留したり、米韓同盟が存続していたり、米韓軍事演習が行われることは、自主権の侵害にあたると非難してきました。つまりは北朝鮮の核政策の根本部分は変わっていないのです。しかし表面的にではあれ、『核の先制不使用』を打ち出したということは、世界に向けて宥和姿勢をアピールしたいという思惑があるのでしょう。」

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また、北朝鮮のアピールは、米国、韓国に対しても行われた。

武貞教授「米国に対しては、『制裁を中止し、敵対政策を撤回し、朝鮮戦争の休戦協定を平和協定に転換し、在韓米軍を撤収させる』と従来の要求を繰り返しました。ただ『責任ある核保有国として核拡散防止の義務を忠実に履行し、世界の非核化実現に努力する』と米国に秋波を送っています。核兵器のない世界を強調してきたオバマ大統領に対して、伊勢志摩でのG7を前に、米朝は共通の目標を持っているとアピールしたのです。

韓国に対しては、『民族自主、民族大団結、平和保障、連邦制実現が祖国統一の道を開くための方針だ』と対話姿勢を明確にしました。これは1980年の第6回労働党大会のときに、金日成主席が提案した高麗民主連邦共和国の構想を繰り返したものです。他方、日本に対しては『朝鮮の統一を妨害してはならない』と述べたにとどまりました。日本に対しては外交の優先順位を下げていることがわかります。」

武貞教授は、党大会を総括し「権力基盤を固めた金正恩体制が、米朝協議を呼びかけ、統一に向けての対話攻勢の準備をはじめて、今後外交攻勢に出ることを示唆した」と見ている。北朝鮮が今後、米国に対してどのようにアプローチを仕掛けていくのかが注目される。

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