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『イワン・デニーソヴィチの一日』が発表されたのは1962年のこと。ロシア文学界に衝撃をもたらしたこの作品により、ソルジェニーツィンは世界に名を響かせた。収容所文学という、新たなジャンルを切り開いた巨匠の名作にパンフィーロフ監督が挑んだ。
撮影がクランクアップしたのは5月20日、その翌日にパンフィーロフ監督は85歳の誕生日を迎えた。ラストカットの撮影はモスクワ州メリホヴォ村にあるチェーホフ博物館の一室で行われた。この博物館でドイツ軍の捕虜となったイワン・デニーソヴィチが尋問を受けるシーンが撮影された。主役を演じたのはタルコフスキー映画『鏡』で父オレーグ・ヤンコフスキーとの初共演でデビューした俳優のフィリップ・ヤンコフスキー。パンフィーロフ監督は映画にかけた想いを次のように語った。
「この作品で私はロシア人らしさを描こうとした。神とともにある生き方に迫りたかった……日常生活とはかけ離れた、非人道的な環境下でもロシア人はくじけずに生きていく。英雄のようでいて大人しく、頑固そうで慎重な性格。大いなる目的のためにこそ生き抜く必要があることを知っている人間だ。そしてこの人は人間としての尊厳を失うことなく生き抜いていく」