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多くの先進国は焼却手段をはじめ、最先端のリサイクル技術を持つ。スプートニクの取材に応じ、専門家たちは他国に問題を生み出しながらゴミ輸出が行われる理由を説明した。そして、大規模「ゴミ返送」の場合、先進国はどう問題を解決する方針なのか?
ロシア科学アカデミー極東研究所ベトナム・ASEANセンター所長のウラジーミル・マジリン博士(経済学)は、受け入れ先の国の一部が環境への影響を認識して受け入れを拒否する一方で、他国ではゴミの受け入れで多くの収益を得ていると説明した。
「有害ごみでさえ、受け入れ先のアジア諸国にとってはただの負担ではなく、悪くない経済的利益でもある。もちろん、経済の発展したシンガポールやマレーシアは他国のゴミ受け入れによる経済的利益を逃す余裕がある。だがベトナムは経済が過渡期で中進国であり、それほど状況が良くないため、ゴミで長らくかなり稼いできた。ベトナムは常に、多くの灰と金属くずをさらなる処理のため輸出していた。さらに、ASEANにおけるベトナムはプラスチック製品の製造・輸出大国の1つだ。ベトナムが、首尾よく処理しているゴミ受け入れを完全に止めれば、多くの収益を失う」
さらに、経済的要因に加えて政治的要因もある。多国籍企業は活発にASEAN諸国やベトナムに投資。ベトナムは今、海外資本にとってタックスヘイブンに変わった。マジリン氏はこうした見方を示した。
「西側からの数十億ドルのベトナム投資は同国の今の急激な経済成長率の牽引力となっている。国内総生産(GDP)の伸びは7%だ。米国や欧州連合(EU)がベトナムに今後もゴミ受け入れを要請しても驚かないし、ベトナムは投資を失うリスクを取らないためにも、拒否できないだろう。将来的にはもちろん、これはベトナムにとって深刻な環境問題に変貌するだろう。つまりベトナムは今日、中国の道に沿って進んでいる。」
国のGDPと国内消費が多いほど、ゴミは増える。25年間、急速に経済が成長する中国はまだ、世界のゴミを輸入して処理していた。主に先進国からのプラスチックごみの45%だ。EUからのリサイクル可能なプラスチック95%と米国からの70%はリサイクルのため、空のコンテナ船で中国に送り返されていた。
中国の輸入終了後、主な輸出ゴミの流れはインドや東南アジア諸国に向けられた。結果として2018年前半、東南アジアが文字通りプラスチックごみで溢れかえった。フィリピンとマレーシアは状況への介入を余儀なくされた。
そのため専門家らは、ベトナムも中国の否定的な結果を考慮して、フィリピンやマレーシアに続く可能性を除外しない。いずれにせよ、ベトナム政府はすでに、ゴミ輸入許可証の発行を止め、紙、プラスチック、金属廃棄物の違法出荷を根絶すると発表した。
ごみ焼却施設は出力全開で稼働しているが、ゴミの量に対処できていない。欧州だけでも2025年までに、ごみとそのリサイクル問題の完全解決のため、さらに250箇所のごみの仕分けステーションと300箇所のごみ焼却施設を建設する必要がある。米国では多くの企業が一部のプラスチックと紙を埋め立て地に処分する規則がある。中国による輸入拒否以前は、米国内でのプラスチック処理量は全体のわずか10%だった。
世界のゴミ問題に前向きな結果もある。各国政府がようやく、プラスチックのリサイクルについて真剣に検討し始めた。
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