現代社会のパラドックス:先進国に潜む認知症のリスク

CC BY-SA 2.0 / Andrew Zhigaloff / oldman現代社会のパラドックス:先進国に潜む認知症のリスク
現代社会のパラドックス:先進国に潜む認知症のリスク - Sputnik 日本
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世界保健機関(WHO)の専門家らが警鐘を鳴らしている。認知症の患者数は世界で5000万人に達しており、2030年には7500万、2050年には現在の3倍にまで膨れ上がる勢いだ。

この悲惨な傾向は日本でも確認されており、2012年から2018年の間に認知症患者が行方不明になるケースが2倍に増加した。年齢別で見ると、80代以上の人が大半を占めている。

そこでスプートニクは、医療が進んだ先進国の日本で認知症患者が増え続けるこの悲惨な傾向にクローズアップする。

ロシアの公共団体「高齢者の世界」設立発起人の一人で、「医療サービス・プラス」社のウラジスラフ・ズブコフ代表取締役によれば、現代社会のパラドックスは、生活水準に応じ、高齢時に認知症を患うリスクが高まる点にこそある。ズブコフ氏は次のように指摘している。

「生活水準が高い欧州や米国をはじめとする国々でも同様の状況が確認されている。経済と教育の水準に応じて寿命も延びるが、認知症を患うのは往々にして高齢者である。そして、快適極まりない環境で、何不自由なく暮らしている人でも、認知症のリスクは残念ながら避けられない。そもそも認知症は脳細胞の摩耗と関係しているためだ。肉体は100歳まで美しく保てたとしても、人間の脳を治療することは現代の医療では難しい。脳は否応なく老化し、その過程で認知症が発症する」。

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日本は他国に先駆けて認知症に対する警鐘を鳴らしてきた。1990年代、認知症を患ったことにより孤立し、そのまま孤独死する高齢者が爆発的に増えたことが発覚したためだ。

この経験を踏まえ、認知症患者の日常的ケアは国家レベルで解決する必要があることが分かった。こうして「認知症ケアセンター」というネットワークが誕生し、今では日本全国におよそ2500か所も存在する。患者は利用料の1割を負担し、残りは政府が負担する。

2018年11月に開催されたセミナー「老人病学と長寿学の諸問題:ロシアと日本の経験を踏まえて」(N.I.ピロゴフ記念ロシア老年学研究・臨床センターで開催)によれば、ロシアの認知症患者数は200万人に達する。しかし、認知症患者に対する政府主導の対策はまだ初期段階にあるとウラジスラフ・ズブコフ氏は考えている(同氏はモスクワ初の認知症患者ケアセンターを2004年に設立)。

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「ロシア人の平均寿命がここ最近で15年も延びていることから、ロシアも先進国同様に認知症対策上の課題をかかえている。であればこそ、日本を含む諸外国の経験は参考になる。認知症患者のケアで成果を上げている方法の一つが受け入れ家族の充実だ。その例として、ノルウェーでは高齢者の介護を行う親戚や代理人に対し、政府がサービス料を支払っている。また、スウェーデンでは病気を患う高齢者のケアに、一人当たり数千ユーロ支払う制度がある。それほど高齢者のケアは根気のいる仕事と認識されているのだ。子どもの発散するポジティブなエネルギーが高齢者の認知機能にい い意味で働きかけ、その低下を食い止めることが期待されていることから、幼稚園と老人ホームを併設したケースもある。また、オランダでは認知症患者専用の村を作るという大胆な政策もある」。

一見すると、オランダのホグウェイは何の変哲もない村だ。民家や花壇、噴水、ミニ・マーケット、カフェなどが並んでいる。違うのは住居者だ。誰もが老化による認知症を患っている。村の外に出ることは、住人の安全を考慮して禁止されている。その代り、この村には介護スタッフが勤務しており、入居者らは普段の生活を送ることができる。散歩したり、買い物に出かけたり、趣味に応じて様々なクラブ活動に参加することも可能だ。ホグウェイはこの認知症という病気に対する、最も人道的な回答の一つとして定評がある。

ただし、オランダのホグウェイは一定の成果を得たものの、西欧社会でさえ同様の施設を設置する動きはない。認知症対策に国際的なスタンダードは存在しないからだ。どの国も自らの伝統やメンタリティーを踏まえた形で対処する必要があると、専門家は考えている。

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