「伝統の本質を守るために変更できない要素はない」: 日本の専門家が語る 皇室の山積みの問題の解決について

© AP Photo / Eugene Hoshiko徳仁天皇陛下
徳仁天皇陛下 - Sputnik 日本
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今日、日本の天皇制は多くの問題を抱えている。しかもそのいくつかは、前もって配慮しておかなければ皇室の存続そのものを脅かす可能性があるものだ。しかし何が変更可能で、何を確立された伝統に基づき残しておかなければいけないのか。その点を理解しようと、スプートニクは日本の専門家に話をきいた。

いま取りざたされている問題は?

第二次世界大戦後に天皇の地位が根本的に変わったことにより、今日までに、天皇ができること、できないことに関する多くの問題が蓄積されてきた。新憲法では細かな事すべてが考慮されているわけではないからだ。しかし、多くの問題に対する答えは、皇室の歴史の中で見つけることは可能だ。ただし、過去の類似の例を現代の状況に合わせて上手くアジャストすることが必要になる。

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徳仁天皇陛下はどのような天皇となるか
そのような問題の中でも、まず早急な対応が求められたのが明仁陛下による生前退位の希望だ。これは確かに200年ぶりのことで日本国民を驚かせたが、実際、ここには極めて斬新で驚くようなことは何もなかった。

東京大学史科編纂所の本郷恵子教授は、「現在の天皇が126代目ということになっておりますけれど、ほぼ半分の天皇が譲位しています。11世紀から中世という時代になり、ここから院政(1086 -1840)というものが始まりました。つまり、位を退いで譲位した天皇による政治となりました。これ以来、譲位による代替わりが一般的となります。(先代が)崩御して新しい天皇(が即位)というよりは、譲位から代替わりの方が、何事も計画的に進むということでした」と語る。

本郷教授はさらに、天皇制の歴史について日本人がどの程度の認識をもっているかについては、「一通り日本の歴史といって上(=表面)を覗きますけれど、深いところについてはみんなあんまり考えていないかもしれないです」と述べた。

明仁陛下のケースは公式には「退位」という用語が使われたが、本郷教授は、メディアによっては「譲位」を使用するところもあったと指摘する。後者は「譲る」、つまり天皇が玉座を引き渡す意思をもっていることを意味するが、天皇は象徴となりそのような権利はもたないため、後者の言葉の使い方は間違っているという。

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そもそも、明仁陛下自身が退位希望を公にしたことさえ、天皇がそのような発言をし、結果的に法改正に影響を与える権利をもつのかどうかという論争を生んだ。ここからさらに、天皇に基本的人権はあるのかという逆説的な議論にまで発展した。

本郷教授:「今回の代替わりにおきましては、儀礼の問題以外に、考えなければいけない問題がものすごく多いです。多分、今後問題となってくると思いますが、皇族数全体の減少とか、それから女性宮家の問題、あるいは場合によっては女性天皇の問題。それから現在の天皇の次が直系継承ではなくて、兄弟継承(編集注:11歳の悠仁親王)になってしまうことから生じる問題もあると思います。」


伝統を忠実に守れるか、それとも大きな変更は不可避か

本郷教授:「こういう問題に対応するために、色々の説がありますけれど、常にその伝統ということを大きく言う人々はいるわけですが、ただ伝統と言ってもですね、それはもう大変な変更が加えられているものもあります。天皇は126代にわたって継続してきましたが、政治的な浮き沈みが非常に大きいです。天皇が単独で政治を動かすわけではなく、天皇制が安泰でなかった期間の方が歴史的には長いです。一体その伝統の本質がどこにあるのかを見失わないことが大事ではないかと思う次第でございます。

一体何が本質なのかというと、やはり、天皇権の継承とか天皇制の存続、これこそがですね、伝統と言われているものの本質であって、それを守るためには変更できない要素はないだろうというふうに考えております」。

皇室の歴史の祭事的要素に着目すると、本郷教授は、「古代以来、天皇という地位が変化することによって、この皇位継承儀礼も、縮小や中断、復興と色々な変化を受け入れてきた」と指摘する。本郷教授は特に、皇室儀礼の最大行事の一つである大嘗祭は、財政難を理由に200年間行われず、1687年になりようやく復活したのだと語る。このような史実を考慮すると、秋篠宮さまがこの儀式に多額の費用をかけることに疑問を呈し(約27億円)、それがバッシングの対象になったことも違った目線で捉えることができる。


女性は天皇になれるのだろうか

日本では江戸時代まで8人の10代の女性天皇が存在した。しかし女系天皇(母系天皇)の例は確かにまだ一つもない。過去に小泉純一郎内閣で皇室の女性および女系子孫に皇位継承権を与えようと試みたが、秋篠宮紀子妃殿下の懐妊により、小泉首相(当時)は皇室典範改正法案の提出を先送りした。しかしそれでも、問題は依然未解決のままだと宮内庁は指摘する。2011年末、民主党(当時)野田佳彦内閣は女性宮家創設に関する新たな議論を開始したが、2013年、この改革の反対派である安倍晋三氏の首相就任に伴い、検討は棚上げされた。

共同通信の調査によると、国民の約8割が女性天皇に賛成している。しかし朝日新聞社編集委員の宮代栄一氏(史学博士)はこの問題の解決についてかなり悲観的に捉えており、次のように説明する:「土壇場にならないと議論は起きないと思っています。それが間に合えばいいのですが、もしかすると間に合わないかもしれません。国民を二分するような議論が起きるのはまず間違いない。ただ、国民の全体の意思としては女性天皇容認となっているのですが、特に国会の中には反対意見の人は多いので、それはうまく通らないというのが現状だと私は考えています。本来ならば公約に掲げて選挙が行われてもいいと思うのですが、天皇家の政治的な問題は非常に議論の対象になりにくいものですから、それができないでいるという感じですね」。

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