スプートニクは3月上旬、スペイン政府は新型コロナウイルスを巡る状況を真剣に受け止めようとしていないと報じた。だが3月中旬に状況は激変した。スペインのサンチェス首相は同月14日、「警戒事態」を宣言し、不要不急の外出が禁止された。スペインでは、薬局、病院、銀行、食料品店、「生活必需品」の販売店以外はほぼすべてが閉鎖された。警戒事態はすでに2度延長されており、現在の期間は4月26日までとされている。
市民の移動は、警察、治安警備隊、軍によって監視されている。またドローン(無人機)が空中から状況を管理している。正当な理由なく外出した場合や、2人以上で外出した場合は、平均300〜600ユーロ(3万5000円〜7万円)の罰金が科される。アパートの中庭を散歩することさえできない。追い出されるだけである(これは最善の場合)。だがスペイン人の中には、それでも外出する手段をみつけようとしている人たちがいる。
犬のレンタルと嘘の買い物
ペットの散歩は、例外的に外出を認められている。散歩は「犬が用を足す」ためのものであり、犬とジョギングをしたり、敷地内で遊んだりすることはできないとされている。しかし、自宅で隔離生活を送る状態では、外の新鮮な空気の中を少し散歩するだけでも、犬と飼い主の双方にとっては大きな喜びだ。だがペットを飼っておらず、外に出たくてどうしようもない人はどうしたらいいのだろうか?
外出禁止措置が導入されてから間もなく、一部のスペイン人は、自分のペットのレンタルを開始した。スペインのサイトMilanuciosなどにペットレンタルの案内が掲載され、すぐさま多くのミームを生み出した。一方、実際にこのサービスを利用した人がいるのかどうかはわからない。
in spain people were trying to rent out their dog to give people the opportunity to justifiably go outside i pic.twitter.com/MtSfRfPl0O
— eddie (@weazleys) March 20, 2020
La #picaresca española se supera ante cualquier situación. Hoy he visto a una familia turnándose para pasear al perro. Este #meme es real pic.twitter.com/rzRB4vECWm
— Manuel Arroyo Durán (@MArroyoDPF) March 19, 2020
食料品を購入するための外出も例外とされている。しかし、何も購入する必要はないものの、家の中にいるのが我慢できない場合はどうしたらいいのだろうか?進取の気性を持つスペイン人たちは、自宅で食料品を入れた袋を用意し、それを持って散歩に出かけ始めた。警察に止められても、食料品店に行ってきたと言うことができる。しかし警察はすぐにこの「トリック」を見破り、食料品の入った袋を持っている人にはレシートの提示を求めるようになった。
スペイン人は互いに恐れるようになった?
上記等の行動を取る人たちはいるものの、大部分のスペイン人は自宅隔離の規則を守り、不要不急の外出はしていない。週末の町には人も車もほとんどなく、すべての食料品店が閉まる日曜日は特にそのような状況が顕著だ。
日毎にマスクと手袋を着用している人が増え、互いに1.5メートルの距離も保っている。唯一残念なのは、かつては明るくてオープンだったスペイン人が、暗くて非社交的になってしまったことだ。今は、街中で偶然会った知り合い同士が、立ち止まって言葉を交わすなんて想像できない。反対に、向こう側から人が歩いてくるのに気付いたら、反対側の道路へ渡ろうとするほどだ。
バルコニーでディスコ
スペイン人たちが活気を取り戻すのは夜のみ。イタリアに続いてスペインでもフラッシュモブ「医療従事者たちへの拍手」が毎日行われている。夜の8時ぴったりに各都市の各家で人々がバルコニーに出て拍手をし、医療従事者への感謝を表す。しかしこのフラッシュモブは、スペインでは医療従事者だけでなく、互いへのサポートでもある。20時は、スペイン人がやっと自分自身に戻れる時間なのだ。スペイン人たちは盛り上がる曲を流し、ディスコライトのスイッチを入れ、自宅のバルコニーで踊り始め、隣人と声を掛け合い、楽しむ。
毎日、日が落ちて暗くなると、一日中死に絶えたようだった町が活気づき、騒がしいスペインのフィエスタ(祭り)に様変わりする。それはまるで自宅待機も、数万人もの死者も、窓の外に危険なウイルスも存在しないかのようだ。