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安倍首相 出勤者を7割減らすよう求める どれほど現実的なのか?

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4月7日、新型コロナウイルスの流行拡大を受け、日本の安倍晋三首相が7つの都府県を対象に緊急事態宣言を発令した。安倍首相は国民に向けたメッセージの中で、主に在宅勤務への切り替えで、オフィスに出勤して働く職員の数を7割減らす必要があると述べた。しかし、日本にはテレワークの幅広い導入を阻む多くの障害がある。はたして首相の述べた7割という数字を達成することは可能なのだろうか?新型コロナウイルスの状況は日本の働き方の意識変化に影響を及ぼすのだろうか?スプートニクの東京特派員が専門家とともにこの問題を検討した。

日本と世界のテレワークの現状

東京の調査研究センターであるパーソル総合研究所(東京)の3月23日付の調査結果によると、新型コロナウイルスの拡大防止を目的にテレワークを行っているのは日本全国の企業の職員のうち、約13%にとどまった。これが例えばアメリカでは、企業導入率は85%にのぼる。ヨーロッパではここまで高くはないものの、この数値は一連の国々で日本を上回っている。とりわけ、イギリス(38.2%)やドイツ(21.9%)がそれにあたる。

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ちなみに、総務省の2017年のデータによると、テレワーク未実施の企業にその理由を確認したところ「テレワークに適した仕事がない」という回答が最も多かった。それに続いて多かったのが「情報漏えいが心配」、「業務の進行が難しい」、「導入するメリットがよくわからない」、「社内のコミュニケーションに支障がある」、「社員の評価が難しい」などであった。

通常、このような状況で重要な役割を果たすのが、政府が示す手本である。これまでに香港の当局は、民間企業の職員にテレワークを要請する前に、新型コロナウイルスの問題を受けて国家公務員が在宅勤務を行うと発表している。日本ではこれを急ぐ様子はなく、公務員の多くは省庁へ登庁し続けている。それどころか、国民からの批判にもかかわらず、日本政府は国会の会議を中止する必要はないと主張し続けている。国会の建物はきちんと換気されており、ウイルス拡散の脅威はないというのが理由だ。この状況は超過労働の問題を彷彿させる。公式には、日本では過労死対策が講じられているはずだが、霞ヶ関の省庁の建物では通常、夜中遅くまで窓に明かりが灯っている。

在宅勤務をする数少ない日本人の間でテレワーク支持者が生まれつつある一方で、これに反対する人も少なくない。テレワーク研究の第一人者である比嘉邦彦教授によると、実際のところ、テレワーク自体に本質的な欠点はなく、どちらかというと、どのように実用化されるかが問題だという。「テレワーク実施に反対する意見・問題については、ほとんどがテレワーク自体の問題ではなく、反対するための理由であったり、実施する側(企業や中間管理職者)の問題なので、即効性のある解決策はありません。テレワーク導入で成功している企業を地道に増やし、その内容について広めていくほか(解決策は)ないと思います。」

「コロナ禍でその実態が明らかになった」

1年延期された東京オリンピックは、日本がハイテクの国であることを如実に示す場になるはずだった。今年は、ゲストに道案内をするロボットから人工の流れ星によるユニークな光のショーに至るまで、さまざまな新技術が紹介されるはずだった。しかし、このような革新性の一方で、日本人の日常生活は、他の先進国ではすでに忘れ去られたような、古典的な連携手法にとらわれていることが少なくない。

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例えば、諸外国ではサインや電子署名が用いられているのに、大多数の日本企業では書類の公式な裏付けとして依然として印鑑(ハンコ)を用いている。問題なのは、通常、職員はこのハンコを自宅に持ち出す権利を持っておらず、そのため、ハンコを使うためにオフィスに出勤しなくてはならないことである。しかも、1つの文書に複数の職員が押印しなければならない場合、このプロセスは長引くことになる。この状況の打開策は電子契約に移行することだが、日本では、これにより文書の真正性を特定するのが困難になるのではないかという危惧が生まれている。

一部これに起因する形でセキュリティの問題への過度な懸念が生まれている。まさにこれが原因で、在宅勤務の職員は会社のサーバーに遠隔アクセスすることができない。そのため、いくらかでも重要な内容の業務はすべて、オフィスでしかできないのである。

もうひとつの大きな障壁は、日本の人口の25%が65歳以上であるという事実である。これはつまり、企業で高い役職についている年配の世代の多くが、往々にして、クラウドサービス、VPN、ビデオ会議システムといった最新のテクノロジーツールにあまり詳しくないということを意味している。2018年に、当時68歳のサイバーセキュリティ戦略副本部長の桜田義孝氏が、仕事でコンピューターを使ったことがないと発言し、人々を驚愕させた出来事が象徴的だろう。

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オリンピックを前に、日本では、テレワークをより普及させるための準備が行われた。というのも、前回のロンドンオリンピックでは、人々がテレワークに移行することで、大会開催中の街中の混雑を大幅に軽減できることが示されたからである。しかし、結局、この方向での本質的な前進は見られなかった。

比嘉邦彦教授は言う。「昨年秋の調査でも5割強の企業がテレワーク実施の予定は無いと回答しており、検討中(つまり、未導入)の企業と合わせると8割弱の企業が準備ができていないか、まったく準備するつもりが無かったことになります。従って、今回のコロナ禍でその実態が明らかになっただけということです。」

働き方評論家の常見陽平氏も「五輪に対するテレワーク準備について、呼びかけだけが行われ、ポーズだけで、準備が不十分だったと言わざるを得ない」と述べている。

新型コロナウイルスは日本人のテレワークに対する考え方を変えられるか?

上記の問題以外にも、日本に根付いた「報・連・相」の文化が、総じて、テレワーク導入の柔軟性を削いでいることが分かる。ところが、この点について、専門家の意見は割れている。

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比嘉邦彦氏:「今回のコロナ禍で働き方が変わるかと言いますと、日本では変わらないと考えています。法的強制力を持たせないと、非協力的な経営者が自主的に出勤停止や在宅勤務に踏み切ることは無いと思います。特に中小企業の経営者や顧客企業がテレワークに理解・協力してくれない限り、7割減は不可能な目標に思えます。

現在テレワークを実施している企業の半数程度、また、今後実施に踏み切るであろう企業の全てが、何ら準備無しにいきなりテレワーク(在宅勤務)を実施することになります。結果として、テレワークは「不便」・「仕事がしづらい」などの不満を持ったまま在宅勤務・管理を経験することになります。

従って、コロナ禍が収束した時には、多くの企業で、テレワークは災害時などのBCP対策としては有効だが、平時に実施するものでは無いと感じてしまうのではないかと危惧しています。つまり、元の働き方に戻ってしまい、働き方に変化は起きない可能性の方が、今のままでは、高いと考えています。」

常見陽平氏:「コロナ対策を機会に日本の働き方は変わるかどうかでいうと、変わると思うが、根本的に、仕事の役割分担が不明確であること、過剰な対応をすること、過度にチームで対応しようとすることなどを見直す必要がある。

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また、全面在宅勤務は本来のテレワークのあるべき姿ではなく、テレワークをする頻度、テレワークのスタイル(在宅だけでなく、モバイルワークや、サテライトオフィス勤務など)などをうまく組み合わせていくべきだと思う。

(出勤者を7割減らすことについては)具体的な数字は即答できないが、工夫次第、条件次第では達成できなくはない。ただ今回のような「緊急時」に減らすのと「通常時」に減らすのでは意味が異なる。

今回の取り組みは「オフィス通勤者7割減」というよりも、出社する人が3割でいかに社会と会社をまわすかという点が重要となる。完全在宅勤務にするのではなく、たとえば、出社可能な日を分ける当番制などは検討するべきだろう。なお、在宅にするにしても、むしろ業務が過酷になること、労働者のストレスなどは考慮するべきだろう。」

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