米国と同盟国がアジア太平洋地域で予定している軍事演習は、驚異的な規模のものであり、対中包囲網の強化と拡大を示す狙いがあるものとされている。11月に行われた日中の外相会談後、日本がこのような決定を下すことは、「言動不一致」であり、矛盾しているように思われる。
ロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターのワレリー・キスタノフ所長は、現在の状況について次のように述べている。
「日本は相反する2つの立場を占めています。というのも、現在、中国は強大な隣国であり、大きな軍事的脅威を持つ国であり、しかも日本との間で領土問題を有している国だからです。こうした状況により、日中関係は常に、協力(主に経済分野における)と対立という2つの方向性の間で揺れ動いています。安倍首相時代、中国と日本は接近しはじめていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、両国関係に「新たな時代」を開くことはできなくなりました。習近平国家主席の日本訪問も中止され、しかも11月の外相会談で、習近平氏の訪日について議題にも上らなかったことは特筆すべきことでしょう」。
キスタノフ氏は、このことは、日中関係を示すリトマス紙のようなものであり、それは国家主席の日本訪問の展望がいかにはっきりしないものかを示していると指摘する。
「菅首相は、米大統領選で勝利し、就任式に向けて準備を進めるバイデン氏とすでに会談を行いました。バイデン氏は菅首相との対話の中で、日本と中国の係争地である尖閣について、米国が防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用対象であると明言しました。米国はインド太平洋戦略に参加し、欧州諸国を含め、できるだけ同盟国を増やしたいと考えています。そのことは、アジア太平洋地域での仏英との海上軍事演習に参加することからも説明することができます。英仏はインド太平洋戦略を支持しています。この戦略は航行の自由を保障するというものですが、本質的には中国を抑制するためのものです」。
近年、日本は、東シナ海、南シナ海における領土問題について、国際レベルで中国を非難している。予定されている軍事演習で、仏海軍の艦艇の参加の下、日本の離島の防衛・奪回作戦に通じる水陸両用の共同訓練を行うことは、米国での新政権誕生とともに、日中関係において「対立」のベクトルが優勢となることを示している。
戦略軍事研究局のアレクサンドル・ミハイロフ局長は、米国で新たな大統領が就任すれば、アジア太平洋地域には新たな戦略同盟が築かれていくだろうとの見方を示している。
「最終的に、この新たな同盟がどのようなものになるかによって、米国の中距離弾道ミサイルが今後アジア太平洋地域のどこに配備されるかが決まってきます。中国はこの地域の最大の軍事大国であり、中国が関与している範囲はかなり広いものです。これは、世界各地で中国の軍事基地が拡大していることを見れば明らかです。現在、アフリカの東岸のほぼすべて、東南アジア全土、オセアニアのほぼ全土が中国の影響下にあります。米軍は当然、こうした動きに敏感になっており、大きな懸念を抱いています。かつて米国は、主に大西洋に目を向けていましたが、現在は他でもないアジア太平洋地域に大きな注意を向けるようになっています。なぜなら、特別な戦略的意義を持つ、アジア太平洋地域における輸送路の経済的な重要性を理解しているからです」。
一方、日本政府は米仏英との合同演習に参加することで、地域外の国々からの軍事的支援を取り付けたい考えだ。これに関連して、中国の環球時報は、日本は中国を無力化するため、米英などアングロサクソン5カ国によるインテリジェンス協力の枠組みであるファイブ・アイズに参加する可能性があるとも伝えている。