プレスリリースは、団体「反汚職基金」を設立したナワリヌイ氏の治療に関する同病院の「8番目かつ最後の」声明として位置付けられている。
ナワリヌイ氏の治療に関する報告書は、ランセットからの要請とナワリヌイ氏の同意を得て発表された。シャリテ病院は、ナワリヌイ氏のドイツへの搬送中および搬送後の状態と、ナワリヌイ氏が最初に入院したロシアのオムスクの病院をドイツ人医師が短期訪問した際のナワリヌイ氏の状態について説明している。ナワリヌイ氏はこの間、心拍数の速度を落とした深い昏睡状態にあった。
報告書には、主な経過などが記されている。ナワリヌイ氏は8月22日にシャリテ病院に入院し、それから数日後にコリンエステラーゼ阻害剤による重度の中毒と診断された。その後、ドイツ政府は、神経剤「ノビチョク」系の物質による中毒が明らかになったとするドイツ軍の研究所の検査結果に関する声明を発表した。化学兵器禁止機関(OPCW)は10月6日、ナワリヌイ氏の生体試料にノビチョクの痕跡が存在することを確認した。
ナワリヌイ氏の容態は9月初旬に改善した。昏睡状態から脱し、人工呼吸器が外された。ナワリヌイ氏は数週間後に退院し、現在ドイツでリハビリを続けている。
欧州人権裁判所(ECHR)は、ナワリヌイ氏の中毒を刑事事件として捜査することをロシア当局が拒否したことへのナワリヌイ氏の弁護側の訴えを受け入れた。ナワリヌイ氏は、欧州人権条約に定められている生命に対する権利の侵害を認めるよう求めている。
EUによる制裁
EUは10月、ナワリヌイ氏の中毒事件をめぐりロシア高官などに制裁を発動した。制裁対象となったのは、ロシア大統領府のセルゲイ・キリエンコ第1副長官やロシア連邦保安庁のアレクサンドル・ボルトニコフ長官、ソ連時代に神経剤「ノビチョク」を開発した有機化学技術研究所などロシアの7個人・団体。
ドイツのマース外相は、ロシアはナワリヌイ氏の事件を明らかにするためにいかなる行動もとらなかったため、制裁に関する欧州連合(EU)の決定は正しかったとの考えを示した。
ロシア当局は、治安機関は「犯罪の証拠なし」に捜査を開始することはできないとし、制裁に対する報復措置を発表した。