豪州の研究チームは、この研究の中で、小児がんを引き起こすRNAの異常部位を取り除くことを目的にピーター・マッカラム癌センター(豪州)で作られたゲノム編集の手法、CRISPR(クリスパー)を用いた。そしてこの実験の結果、CRISPRを用いることで、RNAウイルスである新型コロナウイルスの増殖を抑えることができることが明らかになった。研究者らは、CRISPRの基になっている特殊な酵素CRISPR-Cas13bがコロナウイルスのRNAと結合し、ウイルスのゲノムを破壊、それにより、コロナウイルスは人体の細胞内で増殖する能力を失ったと説明している。
豪州の生物学者らは、この方法による有効性を、ウイルス感染したヒトの細胞を用いた試験管内試験で確かめた。この実験では、WHOがより危険度が高いと定めているVOC(Variants of Consern=懸念される変異株)に分類されるものを含む新たな変異株など、異なる種類のウイルスの増殖を最大98%抑えることに成功した。近く、動物実験を行い、将来的には人体実験を行う計画だとネイチャー・コミュニケーションズは伝えている。
研究者らはまた、酵素CRISPR-Cas13を用いた方法は、インフルエンザ、エボラ熱、あるいはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)などのあらゆるウイルスに対処するための抗ウイルス薬の開発にも役立つ可能性があると指摘している。
ロシアの医学研究者らが開発した新型コロナウイルスと変異株の対処法については「スプートニク」の過去の記事でもお読みいただけます。新型コロナの治療におけるワクチン接種者のプラズマ使用の有効性についてもお伝えしています。