アフガニスタン情勢に起因する新たな難民危機は世界の脅威となるのか?

© AFP 2023 / Ozan Koseアフガニスタン情勢に起因する新たな難民危機は世界の脅威となるのか?
アフガニスタン情勢に起因する新たな難民危機は世界の脅威となるのか? - Sputnik 日本, 1920, 27.08.2021
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タリバンがアフガニスタン権力へ復帰したことが同国から西側諸国への避難民の流出を引き起こすおそれがある。通信社「スプートニク」は、世界の各地で彼らを受け入れるにあたってどのような問題が発生するかについて、専門家に意見を伺った。

2015年、北アフリカと中東の国々からの予想外に多くの不法移民が、長年にわたるシリアの戦争に疲れた人たちの流れに加わった。このことが欧州での避難民受入れに伴う一時的ではない、本当の崩壊を引き起こした。

今日、西側世界は、アフガニスタンの権力の交代が欧州における新たな難民危機にとっての次の引き金となることが懸念されている。

地理的環境が欧州へのアフガニスタン避難民の行路を困難に

しかし、欧州研究センターのユーリー・クワシュニン所長は、2021年の欧州におけるアフガニスタン難民に関する危機のシナリオは、地理的要因に関連することはほとんどないと見ている。「なにしろシリア人が欧州に到着するには通常はトルコ国境を経由しなければならない。地中海の欧州各国に向かうにはこのコースが最短となる。たとえばギリシャがそうだ。だが、アフガニスタン難民の主流は高い確率で隣国のパキスタンに押し寄せる。この東の方角は、そこから欧州へ向かうにはその道のりが10倍も遠くなる。一部の避難民がイランに向かうこともあり得るし、さらに中東各国に向かうことも予想される」。

ロシアにとってのテロリズムの脅威

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クワシュニン所長は、あらゆるケースで東方から欧州への陸路の「旅」は、かなりの資金が必要であり、そのため、この実行が可能なのはもっぱら裕福なアフガニスタン人であり、貧しい人たちはロシアにやってくる可能性があると指摘する。「所得の少ないアフガニスタン難民の主流は、とりわけ、タジキスタンやウズベキスタン、トルクメニスタンといった中央アジアに向かう可能性がある。また、こうした事態は、欧州連合(EU)のみならず、避難民を装ったテロリストが紛れ込むおそれがあるロシアにとってもすでに深刻な脅威とばっている」。

他方、EU当局はアフガニスタンの「タリバン」政府を承認していないが、しかし、もっぱら人道的および難民危機を防止するため、彼らのとの対話を開始する必要性を感じている。

難民の流出はマイノリテイーとタリバンとの対話次第

クワシュニン所長によれば、現在、EUの考えは、タリバンがアフガニスタン国内でまさにどのような政治を行うのか、そして、これが国民生活にどのように影響するかという点で、十分に明らかではないという。「避難民の国外への大規模な流出を避けることができるのは、当事者同士の前向きな和解のシナリオであり、多様な宗教的コミュニティーが参加する政府を確立することに他ならない。それは、ウズベク人やタジク人、ハザーラ人(アフガニスタン中部に暮らすイラン語を話すシーア派)といった、国内の少数民族とタリバンが対話と和解を行った時にのみ実現する。内戦の再開といった否定的なシナリオが現実のものとなった場合、各国へのアフガニスタン難民の流入は増大の一途を辿ることになる」。

その場合、米国政府には、アフガニスタンからの無情な避難(タリバン到来に関わる住民のパニックの発生)に対する責任の荷を負う用意があるのか、そして、米国に大量のアフガニスタン難民を受け入れるつもりがあるのか?

米国は避難民への援助を行うが、しかし、それは非常に選択的

米国の専門家ゲボルグ・ミルザヤン氏によれば、米国は実際にこうした人道的行動を行うつもりでいるが、しかし、それは選択的なものとなる。「米国はアフガニスタン難民の運命について議論するが、しかし、今のところ、米国で就労した者、米軍に協力した者に限ると言われている。上院議員50人がバイデン大統領に共同書簡を送り、犠牲者が出ないうちにこれらのアフガニスタン人に特別ビザを急いで発行するよう要請した。他の避難民に関する質問は今のところ存在しない。米国にはこの国の大量の避難民を受け入れる用意が明らかにない」。

しかし、G7各国がこの件で要請した場合、日本政府は移民法を緩和し、例外的に日本へアフガニスタン避難民を受け入れる準備ができるだろうか?

日本は政治的亡命すら受け入れない

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ロシア科学アカデミー日本研究センターのヴァレリー・キスタノフ所長は、それは不可能と確信する。「日本政府は、誰にも、政治亡命でさえ認めていない。誰かがこのことを日本政府に要請したとしても、その人物が滞在できるのは短期間でしかない。現在、他の国はそうした要請の受け入れを望むか決めていない。そうした要請を行う人の多くはその後米国に行くことになる。たとえば、旧ソ連のパイロットのビクトル・ベレンコ氏などは、1976年に北海道に降り立ち、外国政府に機体に秘密器機を搭載した航空機を提供した。この他、いわゆる「小切手外交」の実施など、日本は常に惜しみなくアフガニスタンを含めた貧国に対し経済援助で出資している」と同所長は強調する。

タリバン側は、将来的に日本との良好な関係が構築され、カブールで同国大使館の任務が再開されることを期待している。日本の外交官らは、8月15日にカブールの大使館を閉鎖し、17日にドバイへ避難している。

今回、日本政府は、アフガニスタンに残っている日本国民と日本大使館や他の日本機関で勤務していた地元住民を避難させるために自衛隊の輸送機3機をカブールに向かわせることを決定している。

外交に詳しい情報筋によれば、この行動で最大数百人の避難が予定されている。日本の防衛省によれば、これは同国から外国人市民を避難させるはじめてのケースとなる。共同通信によれば、アフガニスタンを離れる日本人同様、彼らの安全も優先される。

しかし、今後、日本または第3国など、どの国で避難したアフガニスタン人たちが難民としての地位を得られるのか、まだ明らかではない。

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