ロシアが機能していない古いソ連製人工衛星をミサイルで破壊 ISSへの脅威は?過去に同じような例はあったのか?

CC0 / Pixabay / ISS
ISS - Sputnik 日本, 1920, 27.11.2021
サイン
2021年11月15日、ロシアのミサイル迎撃システムA-235「ヌードリ」がソ連の軍事衛星「コスモス1408」を撃墜した。長い間使われていなかったこの衛星は、ミサイルの直撃により破壊され、約300個の破片になった。「コスモス1408」は、直径約5メートルの小さな人工衛星で、高度約500キロメートルの上空を、秒速約7.5キロメートルの速さで動いていた。

破壊された人工衛星

軌道上の衛星が破壊されたのは、これが4回目である。最初の破壊は中国が2007年1月に行った。このときは、中国の気象衛星FY-1Cが高度約865キロメートルで破壊された。重量わずか750㎏の人工衛星は、弾頭の衝突により、4万個の小さな破片になった。
次の人工衛星の破壊は、2008年2月にアメリカが行った。偵察衛星USA-193が故障し、毒性の高い燃料450㎏を搭載したまま、地球に落下しつつあった。その衛星を、ミサイル防衛システム「イージス」のミサイルSM-3が、太平洋上の高度247キロメートルで破壊した。人工衛星のデブリは2日後に大気圏で燃え尽きた。
2019年3月には、インドが、標的として特別に打ち上げた衛星「マイクロサットR」を高度300キロメートルで破壊した。この衛星破壊により、約400個の破片が残った。
最後が、今回の2021年11月15日に実施されたロシアによる人工衛星の破壊である。
この4ヶ国は、宇宙機器を撃墜することができ、そのことを実際に証明した。破壊の方法も近似している。弾道ミサイルを衛星に向けて発射し、弾頭の照準を正確に目標に合わせ、衝突させて破壊する。秒速約7.5キロメートルの衝撃速度で衝突すると、宇宙機器が小破片の雲になるほどのエネルギーが放出される。

ISSへの脅威はあるのか?

今回の人工衛星破壊は大騒ぎになった。人工衛星「コスモス1408」が破壊された直後、アメリカ国防省が、衝突時点で4人のアメリカ人を含む、宇宙飛行士7人が搭乗していた国際宇宙ステーション(ISS)への脅威だと発表したのである。宇宙飛行士らは、ISSが破片と衝突する事態に備えて宇宙服を着用しなくてはならなかった。
アメリカによると、人工衛星由来の大型のデブリは高度820〜300キロメートルの軌道上に分散し、主要なデブリ群は高度500キロメートルに分散したという。
ロシア国防省によると、ISSは高度40〜60キロメートル、「コスモス1408」のデブリよりも低い高度にあるという。ISSとデブリの動きをシミュレーションするモデルが構築され、衝突の恐れがないことが示されていた。
尖閣諸島 - Sputnik 日本, 1920, 20.11.2021
沖縄県の民間空港は尖閣防衛に適しているのか?
さらに、ロシアの宇宙空間コントロールシステムは、地球軌道上の大型デブリを常時追跡している。同様の機能はアメリカのコントロールシステムにもある。ISSの軌道は特にしっかりと監視されている。地上のレーダーで危険なデブリが検出されると、ISSのクルーは警報を受け、回避マヌーバを実行する。これは日常的なオペレーションである。

核弾頭を迎撃するミサイル

アメリカには、衛星の破壊を口実にロシアを非難する理由が少なくとも2つある。ロシアがこのようなミサイルを持つことは、アメリカの宇宙における利益を大きく脅かすことになる。
まずひとつ目に、「ヌードリ」は技術的には、軌道上にあるアメリカの無人宇宙機X-37を撃墜することができる。X-37は、偵察用、そして、敵の人工衛星の奪取と破壊用に開発されたスペースプレーンである。X-37は低軌道にある偵察衛星のうち、しばしば故障して交換が必要となっている扱いにくい衛星群に置き換わるものとなるようだ。
ロシアと中国はX-37を繰り返し懸念してきた。この宇宙機は、偵察に適しているのみならず、一部の情報によると、軌道上に兵器を配置することもできるという。そのため、X-37が対衛星ミサイルの標的となる可能性は十分にある。
2つ目に、「ヌードリ」は宇宙で核弾頭を迎撃するためのシステムとして開発されている。このような対衛星ミサイルが機能するのは高度800キロメートルまでである。核弾頭を搭載した弾道ミサイルもこれと同じ低高度を飛行するため、「ヌードリ」はこれに届く。これは戦略的にとても重要な意味を持つ。
人工衛星の破壊は、実験であり、仮想敵に対する能力の誇示でもある。アメリカの弾道ミサイルLGM-30「ミニットマンⅢ」の弾頭のような、軌道上にある直径数メートルの標的にミサイルを命中させる能力を証明しなくてはならない。それができれば、核弾頭の迎撃のための現実的な手段と見なすことができる。
核戦争では、敵の核弾頭のほとんど、あるいはすべてを迎撃できることが戦争での勝利を意味する。しかし、これは難しい。これまでに2つの方法が提案されてきた。
ひとつ目は、アメリカのイージスシステムで実現しているものであり、ミサイル防衛システムをできるだけ敵の近くの艦船に配備し、ミサイルがエンジンを使って動力飛行するフェーズで撃墜するものである。この方法の欠点は、敵のミサイル発射エリアにいつもそこまで近づけるわけではない点だ。敵もまた、ミサイル発射前に、ミサイル防衛システムを破壊するチャンスを得ることになる。
ふたつ目の方法は、ロシアの地対空ミサイルシステムS-400やS-500で実現しているものであり、弾頭が標的に近づいたところで撃墜するものである。これは技術的には可能であるが、標的から半径15〜20キロメートルとも言われる、非常に狭い範囲でのみ可能である。これは戦略的な意味では欠点である。個々の標的を守ることはできでも、ミサイルの一斉発射をすべて撃退することはできない。これまでに知られているアメリカの核戦争計画の各バージョンには2500の標的がある。核攻撃から守らなければならない施設の数は地対空ミサイルシステムの数よりはるかに多い。
日本が保有するのにもっとも適した潜水艦とは? - Sputnik 日本, 1920, 05.10.2021
日本が保有するのにもっとも適した潜水艦とは?
人工衛星を破壊するミサイルの登場により、核弾頭を迎撃する第3の手段、宇宙での迎撃の時代が到来した。弾道ミサイルは弾頭を宇宙に打ち上げる。その後、弾頭は自力で飛行し、搭載された小型エンジンの力を借りて標的に正確に照準をあわせる。このとき弾頭が迎撃ミサイルと衝突すれば、損傷した、あるいは破壊されてしまった弾頭は、標的に向かうコースを外れ、大気圏で燃え尽きてしまう。核攻撃は成立しない。
核弾頭の宇宙での飛行時間は約15〜20分である一方、迎撃ミサイルはわずか3分で宇宙にある標的に到達することが知られている。迎撃は十分に実現可能と思われる。
「ヌードリ」は移動式であり、ミサイルを標的に合わせて飛ばすための独自のレーダーを持っている。このようなコンプレクスを北極圏の基地に配備することで(アメリカからロシアの標的に向けて発射される弾道ミサイルは北極を通過する)、ミサイル攻撃を撃退するための有利な条件が整うことになる。だからこそ、アメリカは、人工衛星の破壊はISSに脅威となると言ってロシアを非難し、ロシアの最新の開発に大きな危機感を示したのである。
関連記事
日本の30年ぶりの大規模演習。地域の情勢緊迫化を示している?
なぜ日本の海上保安部に大型巡視船が必要なのか?
ニュース一覧
0
コメント投稿には、
ログインまたは新規登録が必要です
loader
チャットで返信
Заголовок открываемого материала