対独戦勝記念日、市民パレード「不滅の連隊」現地ルポ 顔のないプラカート、両親の思い出の写真

© 写真 : Asuka Tokuyama不滅の連隊
不滅の連隊 - Sputnik 日本, 1920, 10.05.2022
サイン
9日の対独戦勝記念日、モスクワでは市民による行進「不滅の連隊」が行われた。100万人以上の参加者が、第二次世界大戦(主には独ソ戦を指す大祖国戦争)に参加した先祖のポートレートを掲げ、市の中心部を貫くトヴェルスカヤ通りを進み、赤の広場まで練り歩いた。現地からの報告をお届けする。
この催しは2012年にシベリアの都市トムスクで始まり、ロシア全土に拡大。第二次世界大戦で亡くなったソ連兵および市民はおよそ2700万人と、他のどの国よりも多いと言われている。ソ連軍がもたらした対ナチス・ドイツの勝利は、ロシアに住む人々にとって今でも大きな誇りだ。参加者は行進中に、ときおり「ロシア!」「ウラー!(万歳!)」と叫びながら、勝利の喜びと祖先への感謝の気持ちを表した。
今年はオンラインとオフラインが並行して行われ、ボランティア5万5千人が参加した。昨年と一昨年はコロナの影響でオンラインのみの開催だった。今回は3年ぶりのリアル開催とあって、楽しみにしていた人が多い様子だった。家族連れのほか、杖をつきながら参加する人、車椅子に4人分のポートレートをくくりつけて参加する人、一人で来る人など、様々だ。天候は安定せず、パレード開始時は晴天だったが、しばらくしてから強風が吹き、大粒の雨が降り出した。あまりの風の強さに、自作の持ち手が壊れてポートレートが飛んでしまった人もいたほどだ。
戦争に参加したと言っても、前線で戦った兵士、医療従事者、軍需工場の労働者など、様々な人がいた。ポートレートを注意深く見てみると、1942年から43年にかけて亡くなった人が多いことに気付く。筆者は、まさにこの期間にかけて行われた、過去に取材したルジェフ(ロシア・トヴェリ州)の戦いを思い出した。ドイツ軍がモスクワに最も接近したこの戦いは、130万人以上の犠牲者を出したと言われる、独ソ戦の中でも最も激しく残酷なものだった。10代で戦死した人も数多い。中には写真が残っておらず、氏名と生没年、その人が戦ったであろう地域だけを記したプラカートや、「戦地で負傷、集団墓地に埋葬」や「赤軍」とだけ書かれているプラカートもあった。
© Asuka Tokuyamaルート脇でのミニ・コンサート
ルート脇でのミニ・コンサート - Sputnik 日本, 1920, 10.05.2022
ルート脇でのミニ・コンサート
参加者には戦勝のシンボルであるオレンジと黒のゲオルギー・リボンや、ロシア国旗をイメージしたリボン、モスクワ市の旗、不滅の連隊のロゴが入った旗などが配布された。また、ルートの脇では、戦時食をイメージしたそばの実と牛肉の煮込み、紅茶がふるまわれた。至るところでミニ・コンサートが行われ、軍歌を歌う人もいれば、アコーディオン持参で演奏する人、ロシアの民族衣装で伝統音楽を披露するグループもいた。
民族的にロシア人ではない人も数多く参加している。キルギス人の女性は、父親の写真を掲げ、孫の男の子2人と共に参加した。「40年間モスクワに暮らしています。孫と来られて嬉しいです」と話してくれた。「モスクワのギリシャ人」と書いた旗を持ち、ギリシャ国旗とポートレートと共に行進する人々もいた。
© 写真 : Asuka Tokuyama孫と参加したキルギス人女性
孫と参加したキルギス人女性 - Sputnik 日本, 1920, 10.05.2022
孫と参加したキルギス人女性
ある女性は、両親が一緒に写っている写真を持参した。終戦を迎えてから、ドイツ・ベルリンで撮ったものだ。ふたりは写真の中で、仲良く見つめ合っている。
「母のマリアは従軍看護婦でした。この写真は平和になってから撮ったものですから、表情が違うでしょう。実は3人写ってるんですよ。私が母のお腹の中にいるんです。」
© 写真 : Asuka Tokuyama / 両親の写真を掲げた参加女性両親の写真を掲げた参加女性
両親の写真を掲げた参加女性 - Sputnik 日本, 1920, 10.05.2022
両親の写真を掲げた参加女性
夕方にかけて天気も回復。赤の広場にたどり着いた参加者は、モスクワ川を見物したり、さらに別の公園へ向かったりと、それぞれのルートに散っていった。筆者が訪れた市内西部の勝利公園では野外コンサートが行われ、市民が見晴らしの良い丘での散歩を楽しんでいた。
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