国際的な肥料供給危機に直面する世界

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肥料供給 - Sputnik 日本, 1920, 07.06.2022
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世界の肥料市場は新たな現実に適応しようとしている。大部分の国で春の種蒔作業はすでに終わっているが、秋に向けて、世界の肥料市場における製品の流れは変化する可能性がある。世界において、肥料を製造する国は、消費する国よりもはるかに少ない。ロシア、ウクライナ、ベラルーシといった製造者が、市場から完全に、または部分的に撤退したことにより、肥料不足が起こり、その値段は前例がないほどの高騰を見せている。中でももっとも被害が大きいのは、ほぼ100%、肥料を輸入に頼っている国であり、 日本もそのような国の一つである。
現在のような世界情勢の中、今後、状況がどのようになっていくのかは現時点ではわからないが、世界の肥料市場が困難に直面することは不可避である。

世界的な困難が生みだされた前提条件を時系列で振り返る

まず新型コロナウイルスによるパンデミックにより、世界の輸送やサプライチェーンが崩壊した。その後、2021年、ハリケーン「アイダ」の影響により、米メキシコ湾岸にある肥料製造複合施設が被災し、生産停止となった。そして今年の2月には、火災が発生し、ノースカロライナの肥料工場が損壊した。多くの欧州の生産者が、窒素肥料の主原料である天然ガスの急激な価格高騰で、生産削減に追い込まれた。2021年5月にラインエアーの飛行機がミンスク空港で緊急着陸させられた事件の後、ベラルーシのカリ肥料の輸出が制裁の対象となった。2021年の秋、中国が肥料の国内での使用を優先するとして、輸出を制限した。そして2022年3月、ウクライナは、国内および世界の食糧危機を回避するため、すべての種類の肥料―窒素肥料、リン酸肥料、カリ肥料、配合肥料―の輸出を禁止した。

ロシア産肥料の輸出に関する問題

ロシアは世界市場に対する肥料供給の3位以内につけている。
アントニオ・グテーレス国連事務総長 - Sputnik 日本, 1920, 01.06.2022
食糧危機の解決にはロシアとウクライナからの輸出が必要=国連事務総長
複数の国々がロシアに対して発動した制裁には肥料は含まれていなかったが、ロシアの輸出者らは、製品の輸送に関する問題に直面した。3月1日以降、世界の3つの主要な海上輸送会社マースク、MSC(メディタレニアン・シッピング・カンパニー)、CMA CGMはロシアからの貨物の受け取り、ロシアへの貨物の引き渡しを中止した。さらにもう一つの問題は、ロシアの複数の銀行がSWIFTから除外されたことによって、支払いの送金にリスクが生じることによるものである。また、日本を含むいくつかの外国の輸入国は、ロシア産肥料の輸送、支払いの問題、そして制裁の結果などを懸念し、自ら輸入を停止した。ロシアの肥料製造者は、世界市場の値段高騰を背景に、輸出を増加させることに関心を持っている。しかし、輸出に多くを回すことにより、国内市場で肥料不足となることを避けるため、ロシア政府はまず、2021年12月1日から2022年5月31日にかけて、窒素肥料(590万トン)と配合肥料(535万トン)の輸出量を設定し、6月以降は自由に輸出しても良いとした。2022年7月1日から12月31日にかけては、窒素肥料(830万トン)と配合肥料(590万トン)の新たな割当量が定められている。

メディアに見る肥料危機

「食糧システムが直面している最大の脅威は、肥料の貿易が崩壊したことだ」と述べているのは、米国の国際食糧政策調査研究所の主任アナリスト、デヴィッド・ラボード氏で、「穀物不足がいくつかの国に影響を与えている」と指摘している。ナショナル・ジオグラフィック誌は、ラボード氏の言葉を引用し、「肥料の問題は世界のすべての農家に関係があり、穀物だけでなく、すべての作物の生産が減少する恐れがある」と伝えている。
リン資源 - Sputnik 日本, 1920, 06.04.2022
対露制裁がラテンアメリカの肥料輸入に直撃
一方、日本の全国農業協同組合連合会は、2022年6月から10月にかけて、肥料の値段を、2021年11月から2022年5月に設定されたものから値上げすると発表した。時事通信とその他の日本のメディアによれば、輸入尿素の値段は94%高騰、カリ肥料と配合肥料はそれぞれ80%、55%高騰する。日本における値段の高騰は、ロシアとウクライナの紛争の結果、世界における需要と供給の世界的な不均衡、そして肥料を大量に輸出している国との間で輸出が停滞していることが原因だとされている。
朝日新聞が報じているところによれば、日本政府は供給国を多角化する方針であるが、これを実現するのは簡単ではない。なぜなら、肥料のための材料は世界で均等に配分されているわけではないからである。

肥料危機は日本だけの問題ではない

オンライン・マーケット・インテリジェンス社のアレクサンドル・シャシキン氏はロシア、ウクライナ、ベラルーシからの肥料の輸出が減少したことで、不作の危機となり、その結果として、多くの国にとって、中期的展望で、食糧が不足する可能性がある」とし、次のように語っている。
「この3つの国の肥料をどこかの国から供給することは可能です。しかし、これは時間もかかり、また非常に難しいものです。たとえば日本は、肥料の90%以上を輸入しています。そこで、モロッコ、カナダ、ヨルダン、その他の国々で信頼できる供給者を探しています。しかし、その他の輸入国も同じように動いています。なぜなら、肥料危機は日本だけの問題ではないからです。まず、潜在的な供給者と協議を行う必要があります。それは肥料の種類によって、さまざまな国に分かれています。そして供給の手順を定めて、新たな輸送ルートを決めなければなりません。しかしこれは1日でできることではないのです。またこれが、輸送費の高騰と供給期間の延長を引き起こすであろうことは否定できません」
シャシキン氏は、肥料をめぐる現在の状況から判断して、今後、世界の価格は最低でも倍増し、世界の食糧インフレの深刻化を招くことになると見ている。なお、FAO(国連食糧農業機関)による2021年の食糧価格指数はほぼ30%増加した。
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