【視点】日本の盾となる任務を負ったタイフォン

© 写真 : Public domain/US Army/Darrell Amesタイフォン・ミサイル・ランチャー(発射機)
タイフォン・ミサイル・ランチャー(発射機) - Sputnik 日本, 1920, 24.09.2024
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2024年9月4日、来日中のクリスティン・ウォーマス米陸軍長官は、タイフォン・ミサイル・ランチャー(発射機)を含むマルチロール部隊の日本配備について話し合いが進められていることを明らかにした。それ以上の詳細はまだ発表されていないが、この発言そのものが非常に示唆に富んでいる。

標準パーツで作られた新型ランチャー

タイフォン・ミサイル・ランチャーは、2023年に導入された最新のミサイルシステムのひとつ。2023年6月、このランチャーから巡航ミサイル「トマホーク」の試験発射に成功した。早くも2024年4月には、フィリピン軍との合同演習に参加する為、第1マルチドメイン部隊(MDTF)の一部として、このミサイルシステムがフィリピンに配備された。通常新兵器システムの開発には非常に時間がかかる。開発、テスト、実用化までに何年もかかる。だが、このミサイルシステムは急速に開発された。
米ロッキード・マーチン社が開発したのは、米海軍で広く使用されている標準的なミサイル発射システムMk 41、 ミサイル・セル4基で構成されるランチャーの移動式バージョンだ。ランチャーの本体は、標準的な40フイート海上コンテナである。コンテナのハッチが開くと同時にミサイル・セルも垂直に上がる。
つまり、新型ランチャーは標準的で長年使用されてきた要素から組み立てられており、巡航ミサイル「トマホーク」BGM-109、汎用ミサイルSM-6、地対空誘導弾ミサイル「パトリオット」PAC-3など、Mk 41から発射されるあらゆる種類のミサイルに対応している。またこのランチャーは米陸軍用に開発されたものだが、水上戦闘艦である沿海域戦闘艦USSサバンナ(LCS-28)からミサイル発射の実験にも成功している。
陸軍の1個隊は、トラクターで輸送されるセミトレーラーに搭載された4基のランチャー(16個のミサイル・セル)、発電機を備えた車両、指揮車両、そして再装填車両で構成される。
現在の計画では、米陸軍はこうしたランチャー装備の隊を4隊配備する予定だ。つまり合計で64個のミサイル・セルを所有することになる。これは、米国駆逐艦の能力に匹敵する。

対空レーダーに対応

同様のランチャーとミサイル・セルを使用する駆逐艦や陸上配備型イージ. ス・システムとは異なり、陸軍のランチャーは陸上での機動性が非常に高く、道路やオフロード地帯でも簡単に移動ができる。ランチャーは、そのままの形で文字通りスーパーマーケットの駐車場など、コンテナを積んだセミトレーラーが入る場所ならどこにでも設置できる。唯一の要件は、防火の安全性だ。ミサイルが発射されると、ミサイル・セルの上部全体が噴射炎で包まれる。周辺にミサイル発射の炎で引火するものがあってはならない。
このシステムは、攻撃用ミサイルと地対空ミサイルの両方に対応している。攻撃用の場合、巡航ミサイルを発射する際、司令部から攻撃目標の位置をキャッチする装置があれば十分である。だが、地対空ミサイルの場合は、目標追尾レーダーを追加で設置する必要がある。このシステムは移動式「パトリオット」システムのミサイルMIM-104 と、同じく移動式レーダーシステムAN/MPQ-53と互換性があると想定できる。このタイプのレーダーは、70キロの距離から弾頭を、130キロの距離から航空機を追跡できる。つまり、この2つのミサイルシステムを基本にして、攻撃用と地対空用の両方で、数十個のミサイル・セルを備えた複雑で、分散した、秘匿可能なミサイルシステムを配備することは十分に可能である。
こうした能力は、ミサイルシステムそのものの防衛の為にも、敵による対戦砲ミサイル発射、つまりランチャーを標的にした敵からのミサイル攻撃から、生き延びるのに非常に有効である。ランチャーを備えた4つのコンテナ車両それぞれに地対空ミサイルが配備され、レーダー誘導があれば、それらのシステムで空爆やミサイル攻撃を撃退することができる。

報復攻撃の可能性

このミサイルランチャーの開発を急いだのは、中国や北朝鮮のミサイル攻撃、特に大規模ミサイル攻撃が米国にとっていかに危険なものであるかを悟ったからに違いない。米国は報復攻撃の可能性を残しておきたいのだ。
最新の「トマホーク」BGM-109の改良型の射程距離は約1600キロ。日本の福岡に配備された1個隊は、北朝鮮全土の標的を攻撃することができ、北京、上海、南京、さらには武漢にまで届く。沖縄に配備された場合、ミサイルは広州、武漢、大連にも届く。つまり西日本に配備された場合、ミサイルは中国の東海岸全域、さらには500~700キロ内陸の標的を攻撃することができる。だが、「トマホーク」BGM-109は地対空ミサイルや航空機に迎撃されやすいため、目標に命中するという保証はない。
もう一つの選択肢は、地対空ミサイルRIM-174 SM-6 ERAMを対艦ミサイルとして使用することである。高速ミサイル(最大マッハ3.5)は、射程距離が最大460 キロあるため、日本の西側への接近を防ぐことができる。近い将来、新型に改良されたミサイルSM-6 Block IBが登場する見込みだ。速度はマッハ5、射程距離は最大740キロで、空と海上の標的を迎撃する能力がはるかに向上している。
このことから、このようなミサイル・システムの日本配備には、非常に特別な目的があると考えられる。ステルス技術があり、全く思いがけない場所に分散しているために、ミサイルの大規模攻撃を受けても生き延び、反撃するか、接近する敵の主力艦隊を撃退できるだろう。
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