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国際経済に詳しい小手川氏は、日露間の経済協力について、経済制裁下にもかかわらず「相当進んでいる」という見方を示した。
小手川氏「ヤクーツクの農業分野、ヴォロネジやウラジオストクの都市計画分野が動いています。エネルギー分野ではヤマルLNGプロジェクトも進んでいます。またNEDOやJBIC(国際協力銀行)は実際、とても評判が良いです。
問題は都市銀行です。日本の都市銀行は、ニューヨークに相当な拠点を持っていますし、日本の3大メガバンクは全て、日本の銀行というより『米国市民』であり、そのため経済制裁の影響を直に受けてしまい、何もできないのです。その意味では経済制裁を早く解除してほしいと思います。あるいは、少なくとも日米両首脳間で『米国の監督官庁が日本の金融機関の足をすくうことはない』と合意できればよいですが、まだそういう段階にはなっていません」
小手川氏は、金融機関の、コンサルタントとしての役割は非常に大きいと指摘している。例えば日中間では、長らく中国に拠点をもつ日本の金融機関がノウハウをもっているため、日本企業にとって大いに助けになっている。
小手川氏「私が一番問題だと感じているのは、『ロシアの金融機関で日本に事務所を持っているところがない』ということです。今は少し下がりましたが、一時期、ロシア国債が3年もので7%でした。それからズベルバンク(ロシア最大の商業銀行)でも一年の当座預金が10%でした。そうした情報をちゃんと知らせれば、日本国民で投資したい人はたくさんいます。しかし、それを売るところがないのです。少なくともズベルバンクやVTB24、ガスプロムバンクくらいは、東京に支店を持つべきでしょう。銀行というのは最大のコンサルタントです。企業規模に関わらず、外国に進出しようという時に、自国の銀行というのは頼りにされる存在です。日本語ができるロシア人やロシア語ができる日本人が金融機関で働き、コンサルタントとして育っていけば良いのですが、今の日露間にそれがないことは大きいネックです」
中国と違い、ロシアの会計事務所や法律事務所はソ連崩壊後に欧米から進出してきた。小手川氏は「その意味で、中国とは異なり、完全に欧米スタンダードになっています。日本とロシアは完全に補完的な関係なのですから、金融の相互交流を迅速に進めるべきです」と話している。