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第1に、両首脳が望む結果につながらない可能性もある。トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長がお互いに、すでに明らかである立場を表明するに終わるだけかもしれない。トランプ氏は北朝鮮の核兵器とミサイル放棄を求め、正恩氏は軍備と国連憲章により保証されている自衛権に対する国家の主権を認めるよう要求するという可能性だ。この場合、首脳会談は失敗だと考えても良い。だが面目を保つため両首脳はおそらく、会談後もより建設的な対話を続ける可能性に含みを持たせるだろう。
第2に、会談が共同声明の採択で終わる可能性だ。条約ではなく、相互に義務を課す効力を持たないが、会談を行い、意見を交わしたという事実を政治的に強固にする。これは、朝鮮半島の安全保障に関する条約システムを段階的に構築する方向へさらに進んでいける可能性もあるということに基づくと、最良の選択肢だろう。
最悪の可能性は、会談が成立しないことだ。会談はすでに何度もご破産の危機に晒されてきた。この数日でも、トランプ氏の顧問弁護士を務めるルドルフ・ジュリアーニ氏の奇妙な発言が会談を台無しにしかけた。それによると、正恩氏が「膝をついて」米朝会談を頼んだという。この発言は通常の外交慣習の枠に収まらないという点で奇妙だ。そして、ジュリアーノ氏があくまで個人的な見解を示したのか、米国政府がこうした手段で、会談への関心が高くないことを示したのかは明らかではない。
いずれにせよ、双方は強硬な立場を取りつつ、まだ会談に向かって進んでいる。朝鮮半島の核問題の歴史を分析し、正恩氏は国際的な制裁を解除する見返りに軍事的なミサイル・核計画を永久に停止することを提案する可能性もある。その場合も核兵器は北朝鮮に留まり、北朝鮮は平和的なロケット建設と平和的な宇宙への打ち上げの権利を保つ。トランプ氏がこうした提案に満足するかが問題だ。ホワイトハウスのサンダース報道官の発言から考えると、トランプ氏はまだ制裁を中止する用意がない。
いずれにせよ、第1回米朝首脳会談が成功するかについて、まだ大きな疑念が残っている。 これは何よりも、核兵器と弾道ミサイルを残すという条約を北朝鮮と結ぶことは、核不拡散体制の弱体化、国連安全保障理事会の威光の弱体化、そして米国の威光の弱体化につながることに関係する。だが、正恩氏が一方的に核・ミサイル兵器を放棄することはまずないだろう。