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コワレーニン氏は、ロシアにおける村上春樹ブームの最大の功労者だ。約20年前「羊をめぐる冒険」の翻訳で初めてロシアに村上春樹を紹介し、翻訳だということを感じさせない自然な文体で、原作の世界を表現した。「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」や「ダンス・ダンス・ダンス」など代表作の翻訳を手がけ、エッセイを執筆するなど作家としても活躍している。
コワレーニン氏は日本における女性の役割の変遷を紹介。この日クローズアップされたのは、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師の月岡芳年(つきおか・よしとし)と、彼の作品「風俗三十二相」だ。これは32枚の連作から成る、様々な社会階層の女性たちを描いた美人画の代表作だ。こたつや煙草、お灸といった日常の一場面、蛍狩りなどの行事、浮世絵特有のエロチシズムなど、それぞれの画にこめられた意味の説明に、参加者は熱心に聴き入っていた。
「ゲイシャ」「サムライ」といった言葉はロシアでも誰もが知っているが、その真の姿はほとんど知られていない。コワレーニン氏は芸者の種類やその仕事、現代日本におけるサムライという言葉の意味など、外国人にはわかりにくいニュアンスについてユーモアを交えて話した。
参加者のアンジェリカさんは「浮世絵の世界に浸ることができて感謝です。学生時代に日本の哲学と文学を学んでいたので、日本文化への懐かしさを感じました」と感想を話してくれた。やはり日本語が堪能なレナーラさんは、「版画はどこかで見たことがありましたが、それが何なのかは知りませんでした。今日のイベントのおかげで、絵師が伝えたかったことや当時の雰囲気、女性の生活がよくわかりました」と話してくれた。