スプートニク日本
パナソニックは約1年前からロシアにおける野菜工場実験を開始した。野菜室内は特別に開発されたLED光源により、赤と青のライトが組み合わさった幻想的な空間になっている。内部の室温と湿度は野菜栽培に最適になるようコントロールされている。土や肥料、水、種子などもあらゆる組み合わせを試し、最も美味しく育てられるパターンを模索している。
パナソニックロシアの高城陽一副社長は、「今回のモスクワ大学との協力によって、より栄養価の高い野菜を作るにはどうすればよいか、将来的に専門家からアドバイスを受けることを期待しています。これから両者で、具体的にどういうことができるか協議していきます」と話している。
モスクワ大学・化学学部のステパン・カルムィコフ学部長は、「学生が企業の活動内容について知り、卒業後にはイノベーションを起こして市場の要求に先駆ける存在になってほしい」と、研究だけでなく実際のビジネスに触れられる機会をもつことに期待を示した。
野菜工場自体はパナソニックにとっては初の試みではなく、日本、中国、シンガポールですでに成功を収めている。いずれも、パナソニックの自社工場で野菜を栽培し、消費者に届けている。特に野菜自給率の低いシンガポールでは、野菜を安定供給できる工場栽培が歓迎されている。
野菜室で収穫されたもぎたて野菜
© 写真 : Asuka Tokuyama
野菜室でできたばかりのサラダレタスと水菜を筆者も試食させてもらった。モスクワで市販されている葉野菜はボンヤリした味だが、パナソニックの野菜はしっかりとした濃い味。身体に栄養が補給されていく感覚があった。
冬の長いロシアでは新鮮野菜に対する需要が高いが、新鮮さと同じくらい重視されるのが安全性だ。ロシア人の、食品安全性に対する意識は高く、工場野菜なら無農薬で安心して食べられる点が大きな魅力だ。
現在は実験対象としてレタスや水菜、ルッコラ、ラディッシュをメインに栽培しているが、この技術を使えばイチゴやメロンなど様々な果物も栽培することができる。関係者は、今後ロシアにおける流通経路の検討を進め、将来的に一般家庭に届けたいと話している。