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今年10月、日本航空ロンドン発羽田行の副操縦士が、酒気帯び状態で乗務しようとし、ロンドン警察に逮捕された。呼気からは英国の基準値を大きく超えるアルコールが検出された。副操縦士は、搭乗前日の夜から深夜にかけ、ワイン2本とビール約1・8リットルを飲んだという。
航空事故は、たくさんの乗客を乗せていることやその規模の大きさから、フライトに関わるすべての乗務員や整備員らに徹底した安全管理が求められるはずだ。しかし、こうした危機管理意識が緩んでいるとしか思えない事例が多発している。深刻な事態と言わざるを得ない。
日本航空の国内線パイロットのアルコール検査のため新型感知器が導入された昨年8月以降、19件が基準値オーバーを感知し、そのうち12件で交代の操縦士の手配が遅れるなどして、運行が遅延していたことが判明した。日航によると、遅延した12便の乗客への説明では、「乗務員の体調不良」とし、パイロットにアルコール反応が検出された問題は公表しなかった。全日空グループでも10月下旬、機長の飲酒により国内線5便で遅延が生じている。両社とも16日に記者会見を開き、再発防止策を発表する。
たくさんの人命を預かる立場から、搭乗前の過度の飲酒などはもってのほかだ。さらに問題は、日航は乗務前にアルコール検査を実施することが内規で定められているが、この検査では「異常なし」とされていることだ。他の乗務員たちがなぜ酒気に気づかなかったのか。制度や運営の面から徹底した改善が求められる。
現在の航空法は、酒気帯びでの乗務を禁止してはいても、検査は義務ではなく、アルコールの基準値なども定めていない。検査が各社の自主的なもので済まされているのだ。
いまいちど人命を預かる重大な任務であることに注意を向け、国も企業も、厳格な基準設定や運営に踏み出すことが求められる。