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佃氏は、ルノーに吸収合併されることを恐れた日産の生え抜き社員らがノーを突きつけ、たまりにたまったゴーン会長の独裁性に対する反発が噴出し、内部告発に至ったという説は信憑性があるとみなしている。
佃氏「ルノーのトップとしても日産のトップとしても在任期間が長くなり、そろそろ交代か?という声があったにもかかわらず、今年6月に、ゴーン氏がルノーのCEO兼会長に再任され、2022年まで続投すると決まりました。この留任には『日産との資本関係の見直し』をするという条件がついていました。その後、9月の日産の取締役会で、『ルノーとの資本関係の見直しの検討を開始しよう』という話が出ました。これは経営統合に向けて動き出すということであり、日産がルノーに吸収されるということを意味します。それに反対する日産プロパーがノーを突きつける形で、内部告発に至ったという見方が妥当です」
日産は「ルノーとの長年のアライアンスパートナーシップは不変」としているが、ゴーン会長が経営から去った後、ルノー・日産・三菱の三社連合はどう機能していくのか。
佃氏「日産には、このままいくと『フランスメーカーの日本車になってしまう』という危機感がありました。今後の日産の経営陣がしっかり日産を守り、日本の自動車メーカーとして独自性を出し、ルノーに吸収統合されないような方向性を作っていけるか。三社連合の枠組みをしっかりやって、三社の中で主導するような方向に持っていけるかどうかが注目されます」
その中心となるのは、ゴーン・チルドレンとして知られながら、袂を分かった西川廣人社長だ。西川社長はゴーン会長が逮捕された日の会見で、三社連合を継続する方針を明らかにしていた。しかし西川社長自身も東京地検特捜部から任意の事情聴取を受けており、もし法人として日産が刑事責任を問われることになれば、現在の経営陣がとどまることは難しくなるだろう。だが佃氏は「西川社長は、日本人で唯一、ルノーの取締役も兼務した人物で、人脈もあります。これから日産は、ルノーと、ルノーのバックにいるフランス政府にうまく対応していかなければなりません。当面、日産内で、彼に代わってトップになれるような人はいないでしょう」と話す。
ルノー、日産、三菱はいずれもロシアに製造拠点をもっており、ロシアでもゴーン容疑者の逮捕は注目の話題だ。モスクワ国際関係大学教授で日本専門家のドミトリー・ストレリツォフ氏は「今回のスキャンダルは、日本が法治国家であり、金銭がらみの不正が見過ごされる国ではないということを示しています。この事件は、トップ層の不正も見逃さない国として、国際的な日本の地位を上げることにさえなるのでは」と話し、この事件は日産にとって克服できない障害ではないとの見方を示している。
しかし、フランス政府の「日産を吸収統合したい」という意識は根強い。佃氏は「日産がルノーへの出資を25パーセントまで上げれば、フランスの法律により議決権をもつことができます。こういった流れを作れるかどうかが、日産の生きる道を決めることになります」と指摘している。