チュヴァシ共和国、日系企業撤退後も日本との協力可能性を前向きに模索:新キーワードは「健康」

12日、チュヴァシ共和国のミハイル・イグナチエフ首長はスプートニクの独占インタビューに応じ、日本との協力の可能性や、近年の取組みや課題について話した。チュヴァシ共和国はモスクワから飛行機で一時間程度の距離にあり、約120の民族からなる123万人の人々が暮らしている。
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チュヴァシ共和国は、ロシアに85ある連邦構成主体における投資環境ランキングで伝統的にベスト10に入っている。マクドナルドのソースを作っているドイツの食品メーカー「デべレイ」や、スペインの陶器メーカー「ロカ」など欧州系企業が多数進出している。日系企業としては唯一、非鉄金属メーカー「フジクラ」のワイヤーハーネス工場があったが、為替レートの変動などによる採算悪化に伴い、2018年末に閉鎖した。

イグナチエフ首長は、フジクラの撤退を悲観的にはとらえておらず、日本と協力したいという気持ちは変わらない、と話す。

イグナチエフ首長「工場閉鎖は経営判断ですし、自動車市場の変化に伴って最適化しなければならなかったわけで、マイナスにはとらえていません。工場があったおかげで、日本人は、チュヴァシの人々が日本人のように勤勉でよく働くということを確信してくれました」

イグナチエフ首長が、チュヴァシ共和国の強みとして挙げたのは、市民のスポーツへの関心の高まりと健康増進政策だ。このインタビューも、「全ロシア陸上競技大会・チュヴァシ首長杯」の当日に、会場となったスポーツ学校で行なわれたものだ。スポーツ学校と言っても、屋内トレーニングから試合まで全てを一箇所で行なうことができ、宿泊施設も備えた巨大なスポーツ複合施設だ。移動の心配をせずにスポーツに専念できる環境とあって、ロシア中からアスリートが強化合宿に訪れている。関係者は「日本人もぜひ合宿に来てほしい」と話す。スポーツを重視するのは、予防医療に力を入れ、病気になりにくい土壌を作ることに重点を置いているためだ。

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全ロシア陸上競技大会
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農産品の欧州への輸出開始や、外傷治療、眼科治療、核医学によるがん治療、美容外科など、発展している分野がある一方で、住民の所得が低いことが悩みの種だ。ロシアでは地域ごとの所得の差が非常に大きく、チュヴァシでは平均月給が500ドルにも満たない。イグナチエフ首長は、2020年までに500ドルの壁を超えたいと話す。

しかし、チュヴァシ共和国は数字上の給料こそ低いものの、物価も安いので、町を歩いても貧乏な印象は受けない。ロシア国産車もよく見かけるが、それと同じくらいトヨタ車がたくさん走っている。しぼりたて牛乳の自販機があったり、週末は本宅とは別に郊外のダーチャで過ごしたり、卵や鶏肉、野菜などを親戚から安価で買ったりと、日本人の目から見れば、ある意味で豊かな、人間らしい暮らしができる場所だといえる。

ロシアの大手転職サイト「ヘッドハンター」の調査によれば、チュヴァシはロシアの中でも地元志向が強い場所だ。一般的にモスクワやサンクトペテルブルクといった大都市へ行って稼ぎたいと考える若者が多い中、チュヴァシの求職者の7割は、他都市へ引っ越すつもりはない。これといった資源のない地域にもかかわらず製造業や医療が発展しているのは、優秀な理系人材が地元愛のためにとどまってくれるからだろう。そのため、ロシア中から質の良い医療を求めてやってくる患者が後を断たない。これを生かし、メディカル・ツーリズムにも力を入れていく。

今年、イグナチエフ首長はロシア政府代表団の一員として日本を訪問する。首長は「チュヴァシと日本の協力はストップしていません。段階的に、将来の相互関係に向けての材料やバリエーションを模索していきます。将来的にはチュヴァシに、製造業や、食品加工などの工場ができることでしょう」と述べ、日本との関係が更に強固なものになるだろうと自信を見せている。

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