米国は日本に新たなミサイルの脅威をもたらしたか?

日本政府は、中距離核戦力全廃条約(INF)を破棄するという米国の決定を支持した。しかしその際、菅義偉官房長官は破棄について「望ましくない」という表現を用いた。
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同条約は1987年12月に米国と旧ソ連の間で調印され、旧ソ連の後継国としてロシアはこの条約の義務を引き継いだ。米国が条約を停止した後、ロシアも同様の決定を下した。

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4日に東京で行われた記者会見で菅官房長官は 「条約が終了せざるを得ない状況は望ましくないが、米国が発表するに至った問題意識は理解している」との見解を表している。

日本に駐留する米軍と日本にとって、INFの廃棄という結論の影響について検討してみたい。

今回停止された条約は、欧州の軍事的緊張を解決するために起草された。そのときのドイツには、ドイツのソ連軍グループがあり、西ドイツと東ドイツの間の境界は、NATO軍とワルシャワ条約機構(社会主義諸国の軍同盟)の間の接線だった。

中距離核戦力(500から5500キロメートル)の撤廃により、武力紛争が大規模に拡大する恐れは大幅に減少した。
同時に条約は日本の安全保障に力強い貢献を行った。その条件により、旧ソ連(ロシア)は、中距離核ミサイルをアジアの一部地域、すなわち極東も含めて展開することができなかったからだ。保有の戦術的ミサイル(例えば、1980~2003年に運用されていた戦術作戦ミサイル複合体OTR-23 オカー)は、射程距離が300〜500キロメートルで、日本の領土をカバーしていなかった。

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INF条約の規則を準拠する最新ミサイル複合「イスカンデル」でさえ、仮説的には発射エリアに最も近い北海道、函館地域の航空自衛隊基地に到達することすら不可能だ。日本に配置されている主要な航空自衛隊基地と米空軍基地は、すべてロシアの戦術作戦ミサイルの達する範囲外となっている。

しかし現在、状況は劇的に変化している。米国とロシアの両方が、地上発射装置の配備が比較的簡易である海上巡航ミサイルを保有している。ロシアでこれにあたるのがミサイル複合体「カリブル-NK」で、地上目標への射程距離は1400キロメートル。米国ではこれは、最大射程距離2500キロメートルのトマホーク巡航ミサイルとなる。この巡航ミサイルは艦隊に装備できる。これらのミサイル用の地上発射複合体は2~3年以内に開発されるものとみられている。

ナホトカやポシェト地域から発射される「カリブル-NK」タイプのミサイルの射程範囲は、鹿児島までの日本全土を網羅する。2千キロメートル以上とそれ以上の射程範囲を有するミサイルは、沖縄の空軍基地を攻撃する能力を持つ。INFが停止された新しい状況では、空軍基地や海軍基地などの重要な軍事施設に、突然のロケット攻撃を仕掛けることが技術的に可能だ。

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したがってINF条約の停止は、この地域の軍事情勢を劇的に悪化させている。そして、日本がINF条約の停止を支持することは、ロシアとの直接紛争の可能性がないことを考慮したとしても、実際には自国の安全保障を低下させることになる。なぜならこれによって結局、日本の全領土は、これまで対象となっていなかった中距離ミサイルの射程範囲内となってしまったからだ。

ロシアのINF条約違反を非難する他に米国が条約から撤退したのは、ひとつには中国と北朝鮮でのこのタイプのミサイルが発達したことがその理由だった。しかし、ロシアにはこうしたタイプのミサイルは圧倒的に多い。だから米国はある脅威を阻止しようとして、それよりはるかに大きい別の脅威を創り出したことになる。

最善の解決策は、地域、ひいては世界全体の状況が長期的な悪化を避けるため、できるだけ早く交渉を行い、条約に復帰することだ。言葉でクレームが交わされる世界は悪く見えるが、それでも緊張の急激な悪化や、まして戦争よりはまだましだ。


*なお記事の中で述べられている見解は、必ずしも編集部の立場とは一致していません。

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