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スプートニクはこの質問を東洋学者で『日本の外交政策における核問題』の著者であるドミトリー・ストレルツォフ氏に訊ねた。ストレルツォフ氏によると、アメリカとロシアがINF条約から脱退したことで、日本が古くから感じていた、十分に根拠ある恐怖が復活したという。
「現在、東京はデジャヴを感じている。国際安全保障の現状は1980年代初頭の世界情勢を思わせる。当時、アメリカはヨーロッパに中距離ミサイルを配備し始め、ソ連はその対抗策として、NATOでSS-20 mod.1 Sabreとして知られた移動式ミサイルシステム「ピオネール」をアジアに配備することを計画した。これは日本の安全保障を大きく悪化させた。なぜなら、攻撃に晒されるのは、アメリカの基地が位置していた日本の領土だったからだ。そのため、日本は外交レベルでソ連の計画に激しく反対した。日本の主張は、国際安全保障の不可分という概念があり、ヨーロッパの平穏がアジアを犠牲にして存在することは認められないというものだった。」
情勢が緩和したのは、ソ連と米国の間に中距離核戦力全廃条約(INF条約)が調印された1987年のことである。しかし、この条約が破棄されたことで、核の安全保障に関する「幻肢痛」が日本を再び襲っている。
日本は、ロシアが再び国内のアジア地域である極東に新たなミサイルを配備するのではないかと恐れている。そして今回、東京は新しい軍備管理体制の構築に関する意思決定の直接の参加者になろうとしている。
しかし、この交渉における日本の役割には二面性があるとドミトリー・ストレルツォフ氏は言う。「日本人は大衆心理として核へのアレルギーを持っている。この国は核被爆国として、はっきりと平和へのコミットメントを示している。しかし一方で、日本の国防政策はアメリカに安全を保障してもらうことを基盤としている。そのため、東京は同時に核兵器錦糸条約には反対している。なぜなら、このような条約はこの国の安全保障政策に矛盾するからである。日本のこのような二面性のある態度は、総じて、日本領におけるあらゆる米軍兵器の問題において重要である。つまり、東京は言葉では平和を謳いながら、2023年には日本国内でアメリカのグローバルミサイル防衛システム「イージス・アショア」を運用開始する計画なのである。アメリカの計画とバランスをとるため、ロシアは予めクリル諸島に沿岸用ミサイル複合体「バル」と「バスチオン」を配備した。ロシアとアメリカがINF条約から脱退したことで、世界は新たな軍拡競争に逆戻りすることになる。その中で、日本が独自のミサイル能力を発展させる可能性も排除できない。」
日本はまた、現在、中国の核戦力の基盤をなしているのが中距離ミサイルであることも懸念している。そのため、東京は新しい条約の策定に北京を巻き込むつもりだ。しかし、新しい条約が本当にINF条約の代替となり得るのだろうか?
中国社会経済研究センターのパーヴェル・カメノフ副所長によると、北京が新たな条約策定への参加に関心を示すとは思えないという。「この条約に含まれるいわゆる「ミサイル競争」では、中国人は自分たちが後進国であると考えている。アメリカとロシアはこれらの兵器において、中国より各段に優れている。その上、北京は、アメリカは自国の利益にならないと判断すれば、どんな条約からでも容易に脱退するという結論に至っている。このため、アメリカがINF条約から脱退することで足かせを外したばかりの今、北京は条約締結によって自分に足かせをはめることなどまったく望んでいない。しかも現在、アメリカ、ロシア、中国だけでなく、パキスタン、インドも中距離ミサイルを保有しているのである。」
カメノフ氏によると、国際安全保障の新しい体制を構築することは、将来の見通せない長期的なプロセスである。現在、北京がそのような交渉に時間を費やす気があるとは到底思えない。少なくとも、前の条約の当事者であるロシアとアメリカの意見の相違が解消されない限りは。