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イスラエルの死海のほとりで育ったランダウさんは大胆な発想を実行に移そうと決心した。それは死海に、他にはないオリジナルのウェディングドレスを「作る」チャンスを与えること。ランダウさんはこのプロジェクトを「塩の花嫁」と名付け、女性のドレスを死海の水中に沈め、2年の間、そこに放置した。海の塩はある種の布をぼろぼろにする。自然の威力で服地の繊維を損ねることも考えられた。ところがこの実験は幻想的なまでの成功を収めたのだ。
ランダウさんは幼い頃から演劇に熱中していた。そのランダウさんがこのプロジェクトのアイデアを見つけたのは、死んだ恋人の霊に獲り憑かれた女性を描いた戯曲、『ディブク』。ヒロインのドレスをランダウさんはこのプロジェクトのために完全にコピーし、死海の塩水に沈めて、次第に塩の結晶がつき、正真正銘の芸術品に変容していく様子をつぶさに観察した。興味深いのはランダウさんはドレスの変わっていく様子を見ながら、プロのアーティストとなるまでの自分の成長の過程となぞらえていたこと。死海のほとりで育った自分がこのドレスのように知識や経験を文字通り結晶させてここまで来たとランダウさんは振り返っている。
2年の実験期間が過ぎ、ドレスを完全に自ら引き上げるには特殊機械の手を借りなければならなかったが、それだけの価値はあった。ダイヤモンドの水しぶきをあげて光り輝くドレスはまばゆい美しさに変貌していた。普通の塩が2年がかりで変容させたドレスに美術館、博物館がこぞって展示を申し出た。そして今、ロンドン現代美術館の開催している「塩の花嫁」展にこのクリスタルのドレスは展示されている。
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