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澤山グループは創業以来、海運事業に携わっており、澤山氏は日本通関業連合会の副会長や理事を歴任。国際担当を務めていた関係で、ロシアの税関関係者と会う機会が多かった。
澤山氏「ロシアの方と話をする中で、ロシアの方に好感を持ちました。とても真面目で文化度も高く、日本人と似ている面もあり、僕自身がすごく好きになったのです。そこで、何かロシアとビジネスができれば、と考えたのが最初のきっかけです。」
沿海州が抱える課題をふまえ、澤山グループはすでに複数のプロジェクトを進めている。農業用肥料製造の経験を生かして、動物の残渣(食肉処理した際に出てくる食用に適さない部分)から肥料を作るノウハウを導入し、極東の農業の発展に役立てる計画だ。また、ロシア産の魚を加工して日本に輸出するプロジェクトや、ウラジオストクの観光発展のため助言も行う。澤山グループの本拠地は長崎県。クルーズ船が入港し、起伏のある美しい街であるという共通点を生かし、ウラジオストクに観光客を呼び込むための手助けをする。
現在はそれぞれのプロジェクトで、ロシア側パートナーの選定が行われている。ロシア側の意思決定は慎重でスピード感はないが、澤山氏はそれを障害だとはみなしていない。
澤山氏「どのプロジェクトも、我々はいつでもスタートできます。しかし急ぐつもりはありません。パートナーがきちんとした人で、沿海州政府ともしっかりとやっていけるところでないと、特にリサイクルのような事業は難しいのです。だから、じっくりとやっていけば良い、という考えです。水産加工にしても、食べ物ですから、ロシアの方が慣れて、信頼のおける製品ができるまでは急ぎたくありませんし、むしろきちんとそういうことには時間をかけていきたいのです。僕も、現場には急がないよう指示をしています。」
澤山グループは海運業以外にも新規事業開拓に積極的に取り組み、肥料、機械産業、医薬品販売、運送など活動範囲は多岐にわたっており、アメリカ、中国、フランス、イギリスなど、世界中にビジネスパートナーがいる。スプートニクの「ロシアビジネスはこれから会社の柱となるのか、あるいは実験的なものなのか?」という問いに対し澤山氏は、「伸びていくものは伸びる」と鷹揚に話す。これは若手に積極的にチャンスを与えるユニークな社風とも関連している。
日仏関係の発展の功績を認められフランスから国家功労勲章(オフィシエ)を受章するなど国際的に活躍してきた澤山氏だが、本人は特に国境を意識することはなく、世界中のどの国の人も好きで、根本的にはみんな一緒だと話す。それだから、ロシア人を特別視せずにロシアと向き合えるのだろう。むしろロシア人が「そんなことまで話すのか」と驚くくらい、澤山氏は本音でロシア人とぶつかっている。
澤山氏「日露は、国際関係上は様々な問題があると思いますが、我々はロシアの方が大好きですし、ロシアの方も、話してみると、とても日本人のことを好きでいてくれていると思います。僕は小さな仕事や文化活動で一生懸命頑張っていって、日露が平和な関係でいてくれればと願っています。我々は、大企業にはできないような仕事をしたいと思いますし、中小企業としてやれることを精一杯やっていきます。」