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JETROアジア経済研究所の鈴木均上席主任研究員は、今回の訪問は「基本的には成功だった」と話し、日本がイランと米国の緊張緩和に寄与する「当事者国」として、両国の関係改善に向けて積極関与する出発点になり得ると指摘している。
鈴木氏は、今回の訪問で日本、イラン、米国、それぞれにとって一定の成果があったとみている。ロウハニ大統領は記者会見で、イラン南東部のチャーバハール港への投資などについて話が出たことを明かし、日本がイランとの経済・技術・文化的な関わりを深めようとしていることに歓迎の意を示した。
鈴木氏「今回の安倍首相訪問はイラン側の招聘によるもので、イラン側が外交的に成果を挙げたといえます。米国としても、トランプ政権も国防総省も、イランと軍事衝突することは避けたいと考えています。政権内部には軍事衝突も辞さずという考えもありますが、総意としては軍事対立は避けたいという立場ですから、米国にとっても日本の役割は重要です。今回の訪問は日本の『当事者国』としての出発点になり得るものですが、これが外交成果となるかどうかは、今後どれだけ日本がコミットしていけるかにかかっています。この姿勢を継続し、洪水被害への人道支援や水関係への投資などイランへの経済的なコミットを深めていくことがイランとの関係強化という意味で日本にとってもメリットになります。」
13日、イラン沖のホルムズ海峡近くで、何者かによってタンカー2隻が攻撃され、うち1隻は東京の海運会社が運航しているものだと判明した。安倍首相がイラン滞在中に起きた事件とあって、日本に対する何らかの警告では、との可能性も囁かれている。ポンペオ米国務長官は、攻撃はイランによるものだと断定。米軍は証拠映像を公開した。
鈴木氏は、安倍首相の訪問とタンカー攻撃とは、切り離して考えるべきだと指摘する。
鈴木氏「米国は『イランに責任がある』と、いつものように反イラン的な発言をしていますが、この攻撃がイラン当局の意思として行なわれたとは、論理的に考えがたいことです。この攻撃は、イランがこのまま国際社会に受け入れられていくのを許しがたいと考える勢力、安倍首相訪問による緊張緩和の効果を限定的にしたい勢力の仕業でしょう。このタンカー攻撃を受けてもし日本がイランにコミットするのをやめたり、関与の度合いを低くしてしまえば、攻撃勢力の意図した通りになってしまいます。日本はイランともサウジアラビアとも付き合い、中東で全方位外交を展開できている国です。この出来事が足かせにならないよう、積極的なコミットを継続していくべきです。」
ロシアのイラン専門家で、ロシア民族友好大学ウラジーミル・ユルタエフ教授は、今回の訪問で日本が果たした役割について次のように話している。
安倍首相はハメネイ師との会談で、トランプ米大統領からのメッセージを伝えようとしたが、ハメネイ師は拒否。ハメネイ師は、トランプ氏とはどのようなやり取りも行なう価値がない、と一刀両断した上で「イランは米国を信用しておらず、核合意の協議における苦い思い出を繰り返すことはできない」と述べた。
ユルタエフ氏「米国がイランと『新しい取引』のための対話をしたいと考えているのなら、米国は何か具体的なアクションを起こさなければなりません。米国からしてみれば、イラン側の『言葉』だけでは足りず、イランにおける原子力が、平和利用以外の何か他のものに転用されない、ということを確約する『契約』が欲しいのです。」
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