ボリシャコフ氏が演奏する曲は、アカデミーで音楽を学んだ現代音楽作曲家マックス・リヒター氏による「H in New England」。燃え盛るピアノを使いMVを制作するアイデアを提案したのは、ボリシャコフ氏の友人だという。
撮影現場にはカメラマンとディレクターに加え、火元責任者のグループがいた。彼らはリテイクの度にピアノに火をつけ、消火した。近くには消防隊と救急車も待機していた。
だが消防隊と救急車の出番は無かった。撮影中に緊急事態は起きなかったという。
撮影中、ボリシャコフ氏はけん盤に触れるだけではなく、実際にピアノを演奏。だが、音源にはスタジオ録音の音を用いたという。
ボリシャコフ氏はサンクトペテルブルクにあるドム・クリトゥーリ(文化の家)で社会教育活動のインストラクターとして働き、視覚障害を持つ音楽家のグループ「Daniel DEFO」の監督を務めている。ボリシャコフ氏は全く目が見えない全盲ではなく、少し見える弱視だ。
山下洋輔氏の成功
燃えるピアノを演奏した音楽家はすでに無数に存在するが、こうした「トリック」で最も有名なピアノストの1人が、山下洋輔氏だ。山下氏はジャズピアノストで、2008年には燃えるピアノで演奏する映像を撮影している。