ウェルカムセレモニーの準備はかなり念入りに行われていた。ロシア代表の到着のずいぶん前からホールには待ちわびる子どもたちの歓声が響き渡っていた。歓迎に集まった中で一番の主人公は子どもたちで、手に握ったロシアの国旗を熱心に振りながら、カメラの前でポーズをとっていた。
31名から成るロシア代表は1列目に通された。選手らはホールに集まった人たち全員に笑みを振りまき、求めに応じて握手に応えた。一行が着席するやいなや、間髪入れずに力強い和太鼓演奏が始まった。これにはロシア人選手らは震えるほどの感動を味わった様子で、ほぼ全員が電話を取り出し、演奏を録画していた。この和太鼓について、ラグビーワールドカップ・リミテッドのディレクターのガレス・ディビース氏が後で行ったスピーチの中で、ニュージーランドのダンス「ハカ」を想起させるもので、日本は日本版「ハカ」で自国民が抜群のコンディションにあることを証明したのだと賛辞を贈った。
ラグビーワールドカップ2019組織委員会の嶋津昭事務総長は、ロシア勢の活躍を祈念した歓迎スピーチを行っている。
「ロシアは日本と同じプールA。その結果をドロー(draw)で引いたのは日本の総理大臣、安倍さんです。安倍総理は9月の初め、ウラジオストクでの東方経済フォーラムでプーチン大統領との会談の際に『ロシアのチームは強いそうですね。日本を除いた全部の国と戦って勝ってください』と発言をされたそうです。私はそういうことを申しません、組織委員会は厳正中立な立場でございます。ロシアチームのこれからの活躍を心からお祈りしまして、私の歓迎の挨拶といたします。」
その後、ロシアの選手らに、W杯参加を記念したメダルとキャップが贈呈された。ロシア代表のリン・ジョーンズ監督は贈呈されたメダルを受け取ると、よく見えるように子どもらに近づき、実際に手に取って触らせていた。
セレモニーで特にロシア人にとって興味深かったのはだるま目入れ式だった。目入れの大事な役目を仰せつかったのはロシア代表のキャプテンを務めるヴァシーリー・アルテミエフ。スプートニク東京特派員の隣に座っていた日本人たちは、アルテミエフが長々と時間をかけ、念入りにだるまの目を入れているのに驚きを隠さなかったが、入れ終わると「心を込めてうまくできた」と満足気だった。
さいたま市の清水 勇人市長、ロシア・チームの代表のスピーチの後、ロシア人選手らは喜んでサインや写真撮影に応じた。そんな中、ロシア人にとっては本当に嬉しいサプライズが披露された。日本の子どもたちがロシアの国歌を美しい歌声で合唱したのだ。これはロシア側の大きな感動を呼んだ。