日露交流年の閉会イベント、モスクワ市立教育大で開催:高まる日本語教育の需要と広がる進路【写真】

19日、モスクワ市立教育大学で、日露交流年に別れを告げるイベント「ピョートルとフェヴロニアのお茶会」が開催された。日露交流年の公式的な閉会式はプーチン大統領の訪日にあわせて6月に大阪で執り行われたが、すでにロシアの教育機関は夏季休暇に入っていたため、新学期にあわせて、追加の閉会イベントを企画することにしたのである。ステージでは日本にちなんだ芸術作品の表彰式、コンサートなどが行なわれ、大学構内では折り紙や書道といった日本の伝統を学ぶワークショップが開かれた。
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イベントのタイトルになっているピョートルとフェヴロニアとは、ロシア正教会の聖人で、理想的な夫婦の象徴だ。ロシアでは、7月8日は「家族、愛、貞節の日」と定められ、家族愛について考える日になっている。

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イベントに華を添えたのは可愛らしい子どもたちで、彼らはロシア伝統の頭飾り「ココーシニク」を手作りしたり、ステージで歌を披露したりした。子どもたちは、モスクワ郊外ゼレノグラードにある教会付属の日曜学校「鐘楼」の生徒で、ロシア正教会の伝統について学んでいる。

子どもたちの指導にあたっているミハイル・イリイン司祭は、ロシアにおける家族観の変化について次のように話している。

イリイン司祭「ロシアは欧米に比べれば、伝統を守っており、特にロシア正教会の信徒は、伝統的な家族観に従おうとしています。現代的な見方、というのはいつの時代にもありました。しかし、それが社会にどれくらい受け入れられるかはわかりません。それは、明日にはもう存在しないかもしれません。伝統とは、長い時間をかけて、地面に深く根をはった木のようなものです。ロシアでも日本でもそれは同じでしょう。人間がどう育つか、善悪の判断ができる人間になるかどうか、大部分は、家庭にかかっています。家庭から全ては始まるのです。」

「ピョートルとフェヴロニアのお茶会」は、東洋歴史学者のナタリア・エロフェーエワさんが主宰するプロジェクト「聖ニコライの道:白樺から桜へ」の枠内で行われた。このプロジェクトは、日本への正教会伝道に生涯を捧げた聖ニコライの足跡を追い、日露友好につなげようというものだ。2017年にはこのプロジェクトの枠内で、トヴェリ州にある聖ニコライ教会の敷地に桜が植樹された。また今年8月10日には、同教会の敷地内で聖ニコライ像の除幕式が行なわれている。

会場となったモスクワ市立教育大は、モスクワに数ある大学の中でも、特に日本語教育に熱心なことで知られ、数多くの卒業生が、東洋学の研究者や通訳、日系企業の社員として活躍している。

外国語学部のエレーナ・ターレヴァ学部長によれば、この5年間、日本語コンクールに参加する学生の数は増加しており、レベルもどんどん上がっている。ロシアの高校生は、高校卒業時に国家統一の卒業試験を受け、その成績をもとに大学に入学する。近年、統一試験において、英語で高得点を取った生徒たちが、大学で専攻を決定する際に、英語ではなく日本語を選ぶ傾向があるという。つまり、日本語ができる人は、ほぼ例外なく英語もできるということになる。

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また、日本語はけして若い人のためだけのものではなく、生涯学習の科目として年金生活者にも人気がある。そういった層に特化した教材を作ることも、新たな課題である。

いっぽう、選択科目として日本語が学べる小中学校は、まだモスクワに5か所しかないものの、その後の進路で日本語を選択する子どもたちも多い。日本語教育に携わる人たちは、日本語を採用する学校を増やし、将来的に日本語を国家統一試験の科目に含められるよう、ロシア教育省の基準を満たした小中学生向けの日本語の教科書を作成したいと願っている。

ターレヴァ氏「東洋の文化、特に日本文化に興味をもつ人は本当に多くて、文化に没頭した学生たちが、日本語を熱心に勉強しています。また、今のところ、医学、IT、法律など、特定の分野に特化した日本語通訳者はとても少ないですが、そういったプロフェッショナルの育成が求められる時代が来ています。例えばロシアと日本は健康・医療分野で協力を深化させており、日本政府もそれを支援しています。英語は確かに、仲介的な役目をもつ言語ではありますが、やはりロシア語・日本語という互いの母語で協力を深めることが必要だと思います。」

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