このイベントは北海道文化放送(UHB)と在ロシア日本国大使館の共催により、「うまいっしょ!北海道2019」と題して、来年2020年から始まる日露地域交流年のプレイベントとして実施された。北海道は、サハリンやウラジオストク、ハバロフスクといった、日本の比較的近くに位置するロシアの諸都市ではよく知られており、愛されているが、ことモスクワとなると、日本好きの間でしか知られていない。モスクワから北海道まで行こうとすれば9時間ものフライトに耐えなければならない。なので、イベントの主目的は、ゲストたちに、長時間で、費用もかかるが、北海道訪問はそれに値すると理解してもらうことである。何しろ北海道では、美味しい食を楽しみ、温泉でリラックスし、冬のうっとりするような景色を眺めることができるのだから。
イベントで用いられた食材は、特別に北海道からモスクワまで運ばれてきた。繊細な甘みの北海道産のホタテは、口の中でとろけ、北海道産米の味わいを生かした日本酒はとてもまろやかだった。川原さんの主導で行なわれた餅つきにはゲストも参加し、自分達でついたお餅を堪能した。
イベントで提供された様々な北海道のソウルフードの中で、最も北海道らしさにあふれていたのは、おそらく石狩鍋だろう。脂ののった鮭のぶつ切りが入った濃厚なスープには、バターが入っている。モスクワの冷たくて湿った冬でも、石狩鍋のスープをお椀に一杯飲み干せば、身体がすっかり温まりそうだ。こういったスープは、まだモスクワのレストランでは食べることができない。
スプートニクは川原さんに、北海道の伝統料理のレストランをロシアにオープンする予定はありませんか?と聞いてみたが、川原さんいわく、ロジスティクスの問題が大いにネックになっているという。
川原さん「まだ日本の食材がロシアには入りづらいというか、日本から輸出しにくい状況にあります。ロシアにもっと日本のお米さえあれば、おむすびやお団子、お餅にしたり、大福などの和菓子にも加工できるので、それが可能になってから本格的に考えたいと思います。」
ロシアで北海道料理をもっと頻繁に楽しみたいと考えているのは、私たち取材班だけではない。
川原さん「私は札幌でお店をやっていて、今年の春も、ウラジオストクの大学で一緒におむすびを作りました。明日と明後日は、モスクワ大学とロシア民族友好大学で餅つきをやります。これまでのイベントでは、食べた学生さんたちがみんな、ロシアでお店をやってくださいと言ってくれるので、少し本気にしています。」
川原さんがロシアを訪れるのはこれが初めてではないので、何か好きなロシア料理があるかどうか聞いてみた。
川原さん「モスクワには去年、初めて来ました。帰国した後に、自分の店でボルシチを出してみたんです。北海道でも赤ビーツがとれるので、北海道の人もビーツのことは知っているのです。そうしたら、若い女性から『なんだか美味しそう』『かわいい』という声が出て、とてもよく売れましたよ。」
スプートニク:「それでは、札幌にロシア料理店をオープンさせるという計画はどうでしょうか?」
はっきり言えるのは、食べ物にしても音楽にしても余暇にしても、どんな分野でも、より互いを深く知れば知るほど、それを追求したくなるものだ。なので、こういったイベントがより頻繁に開催され、ロシアにおける北海道料理のルポルタージュを今後もお届けできればと期待している。
今年の6月29日には、大阪で日露交流年の閉会式が行なわれた。その際、プーチン露大統領は、日露は地域交流年を実施することで合意したと発表していた。