「不明瞭な踏み切り」 とは?
ルッツとは選手がアウトサイドエッジを使って跳び上がりのモーションに入り、右足のトウを突いて離氷させて行うジャンプ。左足の靴はアウトサイドエッジの状態になければならない。インサイドエッジで跳んだルッツに対しては技術審判からはエッジエラー宣言が出され、減点される。
審判はアンナ・シェルバコワの踏み切りに「不正確な」ものがあったとは言わなかった代わりに「不明瞭な」ものがあったと判断した。つまり審判にはどのエッジからジャンプが行われたのかがわからなかったのだ。しかも、この「不明瞭さ」はシェルバコワがSP、FP合わせて跳んだ5回のジャンプすべてに見つかったというのだ。
「不正確な」踏み切りは減点の対象となり、ジャンプの基礎点から20%が引かれる。ただし「不明瞭な」踏み切りに対する減点はない。ところがミスなく完璧に滑ってもこれへのボーナスは加算されない。つまり最終的なスコアは低くなってしまう。
GP第1戦アメリカ大会でシェルバコワは4回転ルッツを「正確に」跳び、3点を超すボーナス点を獲得したが、中国では「不明瞭な」踏み切りがあったとして1点の減点をつけられてしまった。
ロシアが自国の女子への審判を不公平とする理由は
カルガリー五輪アイスダンス金メダリストのナタリア・ベステミアノワ氏の意見はこうだ。「シェルバコワの演技を何度も見直しましたが、不明瞭な踏み切りなどありませんでした。技術審判は何をもってあんな決定を下したのか、理解できません。おそらくですが、4回転ジャンプを跳んでいるのがロシアの女子だけということが万人うけしていないのでしょう。」
ロシアのフィギュアスケートは破竹の勢いで前進している。アンナ・シェルバコワは前代未聞の4回転ルッツを跳び、エリザベータ・トゥクタミシェワとアリョーナ・コストルナヤはトリプルアクセルを跳ぶ。アレクサンドラ・トルソワ選手は1つのプログラムで跳べる4回転ジャンプの数で世界記録を達成した。現段階でロシア女子はGPの優勝を総なめにしている。このことからロシア人専門家の間では、ロシア女子フィギュアへ向ける審判の目が他国の選手に比べ、ずっと厳しくなり、辛い採点になるのではないかとの懸念が漏れている。
これによって不当な審判が回避できるかどうかは、まだわからない。そんな中、ロシアの女子選手らは一か所で足踏みなどしていない。GP中国杯の後、アンナ・シェルバコワはプログラムをさらに複雑化すると宣言。本人は「トレーニングではフリップに力を入れています。どれだけうまくできるか、様子見ですが、もしかしたらこれもプログラムに入れるかもしれません。この他トリプルアクセルも練習中です」と語っている。