遠めに眺めた写真は黄河の流れのようでもあり、花畑のようにも見える。しかし、すこし近づいて見れば、それが自転車であることがすぐに分かる。これらの自転車は投げ捨てなれたものもあれば、色分けしてきちんと詰まれたものもある。
中国では4年前に自転車シェアリングのサービスが始まり、すぐに人気が高まった。2015年5月にはじめて自転車の共同使用が北京大学の学生たちによってテストされた。数年のうちに70社ほどが自転車レンタルサービスに進出し、ブランドによりさまざまに色分けされた自転車のレンタルサービスが始まった。その後、通りには次第にたくさんの自転車が放置されるようになり、それらは街外れに撤去されることとなった。しかし、こうした自転車の「一時的駐車」は長引くこととなった。
この状況がウー・グオヨン氏に大掛かりなアートプロジェクト「場所がない」を創設させるきっかけとなり、この取り組みによって同氏の名は世界で知られることになった。
グオヨン氏はスプートニクの取材に対し、「はじめ私は自転車をシェアするというアイデアをとても気に入りました。このことが環境保護の目標になるのですから素晴らしいと感じたのです。私自身もこのサービスを利用しましたよ。しかし、その後、自転車シェアリングの発想は急速に自分の『関心』の対象に変わりました。街の商業施設や地下鉄の出入口付近に自転車が放置されはじめました。自転車がいっぱい積まれた場所があちこちに現われたのです。しかし、サービスを提供した企業はこの市場を獲得するための試みに猛然と資金を投入したのです。街中あちこちに自転車が散乱する状況が広がりました。私はこのアイデアに共感するのをやめ、カメラでこの状況を記録し始めました。その後、『自転車の墓場』に足を運ぶようになり、私はこの場所に惹き付けられました。こうして、各都市にある同じような場所を取材することにしたのです」と語った。
昨年の夏、中国の情報サイト「sohu.com」でウー・グオヨン氏の作品が公開された。こうして世界中の数百万というインターネットユーザーが同氏の写真を目にすることになった。
「インターネットで公開されたプロジェクトは大きな反響を呼びました。人々は単純に驚き、どうしてこんなことが起こるのかと疑問を抱きました。なぜなら彼らは日常生活でこうした光景を目にすることがないからです。その後、政府とメディアがこの状況に注目するようになり、政府はこの状況に対応をはじめました。このプロジェクトは、芸術が社会にどう入り込むのかという良い手本となったいえます」。
ウー・グオヨン氏によれば、「中国には現在、1700万台のレンタル自転車があり、それらの半数以上が持ち主がいないか、または盗難されたもの。2020年までに最低1千万台の自転車を、15万トンの金属屑として利用されることになる」。
ウー・グオヨン氏は、中国の「自転車の墓場」は姿を消し始めたが、しかし、それはごみ捨て場の問題が完全に解決されたことを意味するものではないと考える。レンタルカーやスクーターの「墓場」はまだ存在する。同氏によれば、これらの「墓場」はやはり中国に場所がない。