5600万~3390万年前の中頃、陸上のクジラの祖先は海に住む現代のクジラの種へと進化した。
しばらくの間は陸を移動するための肢が残っている移行種が存在していたが、すでに上手に泳ぐことができた。そのような種のうちの1つは、アフリカ、アジア、アメリカ大陸でその化石が見つかっている古代の両生類のクジラ「Aegicetus gehennae」だ。
陸上を歩き海で泳ぐこともできるクジラの種の化石は、エジプトの西方砂漠に位置する世界遺産「ワディ・アル・ヒタン」(別名「クジラ渓谷」)で発見された。この場所は、保存状態が良好な先史時代のクジラの化石が多数発見されていることで知られている。
研究者らが発掘された化石を組み立てたところ、この化石は、体長約3.7メートル、体重約900キロの雄のクジラのものとみられる。
初期の「陸上」のクジラと比較すると、Aegicetus gehennaeは体長と尾がより長く、後肢は著しく退化し、そこには脊椎とのしっかりとした結びつきがなかった。これは、この種が陸上よりも水中で多くの時間を過ごしていたことを物語っている。
研究者らによると、この胴体や尾を波打つように動かして泳ぐスタイルは、水かき付きの肢で漕ぐように泳いでいた初期の両生類のクジラの泳法と、主に尾びれを使って泳ぐ現代のクジラの泳法の移行段階だという。
米ミシガン大学のプレスリリースは、フィリップ・ギンガリッチ教授の言葉を引用し報じた。それによると、4700万~4100万年前に生息していた初期のクジラは肢を使って泳いでいたが、その後、クジラは尾を使って泳ぎ始めた。最近発見されたAegicetus gehennaeは、肢の他に、尾まで続いている大きくて強力な脊椎も持っていたため、陸から海のクジラ種へ、現代のクジラの体型へと変化する中間に位置するものだという。
関連記事