中東歴訪延期についてメディア報道されたとき、首相に対して「臆病者」「国民に対する態度がいい加減だ」といった批判が集まった。日本専門家でモスクワ国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ教授は、安倍首相の姿勢に対して次のようにコメントしている。
「米国とイランの間では言わば『厚情の交換』が行なわれている。互いに勢いのよいことを言っているが、それらはデモンストレーション、パフォーマンス的なものだ。安倍氏はこれに干渉したくない。なぜならトランプ氏は次期大統領選の事前運動として、はったりを利かせたり、時には本気で、自身の支持率を上げ素晴らしいリーダーとしての姿を確立させようとしている。しかしその際、いつも同盟国の利益を考慮しようとはしているわけではない。日本としては米国とイランの罵り合いに加わるよりも、この争いから距離を取った方が得だ。安倍氏は、何にも確信がもてないこの状況で、基本的には、状況がどんな方向に進むか様子を見て、機会を待ちたかったはずだ。」
「日本は伝統的に、石油輸入による経済の結びつきから、イランとの信頼関係を築いている。日本はこのため、イランとの対話において、それなりに他国よりも優位であると期待している。しかし米国とイランによる軍事紛争の可能性は、今になっても、完全に除外されたとは言えない。中東歴訪延期に着手しようとしたのは、訪問中にどこで誰と、そして何について合意できるのか、安倍氏自身が確固たる自信をもっていないからではないか。」
安倍首相の中東歴訪では、イランと複雑な関係をもつ、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、オマーンというスンニ派の国々を訪れる。どの場所への訪問も、どの国で出される声明も、シーア派のイランに対して脅威を与えるようなものとなり得る可能性がある。安倍首相は、待つことで機会をうかがう戦法を取りたかったようだが、後で思い返したようだ。その一つ目の理由は米国とイランとの一時的な緊張緩和だ。そして二つ目の理由はもしかすると、自衛隊派遣とからめて、安倍首相に向けられた国民からの批判かもしれない。安倍政権の支持率が下がっている今、政府にとってこの批判は全く必要のないものである。
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