日本側からはロシアの法制度やインフラに関する複数の要望が出された。ロシアでは昨年末、自動車廃車税(リサイクル税)の還付額を変更する新制度が発表され、2020年から開始された。この制度変更は、約半年にもわたって行なわれた自動車メーカーからのヒアリングを考慮しない形で決定されたものだ。トヨタ自動車ロシアの須賀修二社長は、ロシアメーカーを含む自動車産業へのマイナス影響について指摘した。
日本製鉄の青木泰常務執行役員は、原料炭の供給国としてロシアは魅力的だが、ロシア極東の港湾能力の拡張に鉄道のキャパシティが追いついておらず、輸入増のためには慢性的な混雑を解消してほしいと訴えた。また、輸送中における異物混入やゴミの投げ入れといった問題についても指摘した。
三井物産モスクワ社長兼CIS総代表の目黒祐志氏は、日本には投資意欲があり、投資の決め手は、その国の経済成長への期待感だと指摘。ロシアよりビジネス環境ランキングの順位が低くても日本の投資を呼び込んでいる国はたくさんあり、その理由について考えてほしいとロシア側に呼びかけた。
三井物産モスクワでは、日本語のできる人材を積極的に採用している。高校卒業段階で高い英語力をもっている生徒が受験戦争を突破し、モスクワ大学やモスクワ国際関係大学、高等経済学院といった名門大学へ進学する。日本語選考は狭き門であるため、そもそも日本語を学べる人は、名門大学の学生の中でも特に優秀であることが多い。大学在学中に英語力にも磨きがかかり、TOEICで950点を取る学生は珍しくない。目黒氏は、「20代のロシア人の英語力に関しては、驚くべきレベルに達している。こうした方々を採用し、さらに社内で教育し、彼らの活躍の場を広げてほしい」と日系企業に呼びかけた。
朝田氏は、現在のロシアビジネスは「本来あるべき姿にはほど遠い」と評価。2000年に締結された日露投資保護協定を改定し、外資の参入規制を緩和することや、官民パートナーシップ(PPP)を活用したインフラ・エネルギー分野での連携促進、中東やアフリカなど第三国における日露協力について提案した。また、ロシア投資の促進のためには「ビジネスの予見可能性を確保することがきわめて重要」だと述べた。