「家にいて」という呼びかけに対し 行き場がない人は?

コロナウイルス感染拡大を防止するため、多くの国で政府は懸念を表し、国民に外出を避けるように求めている。日本では緊急事態宣言が当初7都道府県を対象に発令され、その後全国に拡大となった。国民は家に留まり、不要不急の外出はしないように求められている。それでもこの要請を守れない人がいる。ホームレスとして路上で暮らす、あるいはネットカフェで生活する人々だ。
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このような状況は多くの国で見られ、日本も例外ではない。「認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい」は小池百合子東京都知事に対し、オリンピック選手村の一部をホームレスやコロナウイルスで住居・居場所を失った人々に開放するよう要請をまとめた。

この問題は解決可能か

「東京都知事 小池百合子殿:【新型コロナ】住まい・居場所を失った人のために『オリンピック選手村』を開放してください」という請願には5万人以上の署名が集まり、様々なコメントや意見が寄せられている。

「軽症者などの一時宿泊所に、オリンピック選手村を利用することは、まず第一に頭に浮かぶことですが、このことをメディアが取り上げたことも寡聞にして知りませんし、都知事や総理が今まで口にしたことも無いと思います。いまだに話題になっていないしメディアが取り上げていないのも不思議で仕方がありません。政府や都はオリンピック開催への支障などを考えているのか、人の命よりオリンピックってところかな」とネットユーザーの 森島滉二さんは書いている。

なぜオリンピック選手村を住居のない人々に開放しなければならないか、またこの解決にはどのような未知の障壁があるのか。スプートニク通信特派員は同NPO法人理事長の大西連さんに話を聞いた。

新型コロナ「緊急事態宣言」でネットカフェ閉鎖 利用者の居場所はどうなる
「現在、都としては、ビジネスホテルを2000室借り上げており、そちらで対応するつもりのようです。一方で、新型コロナウイルスの影響は4月のみにとどまらず、数か月はあるのではないかと予測すると、今後いま以上に多くの人が生活に困窮する可能性があります。そうなったときに、果たして2000室で足りるのか、という問題が発生します。私たちとしては、タイミングをみつつ、都に対して求めていきたいと考えています。」

大西理事長によると、新型コロナウイルスの影響による経済的困難で、以前からホームレス生活を送っていた人だけではなく、つい最近住むところを失くした人にも支援が必要だという。現時点で言えるのは、コロナウイルスが4月内に収束するとは考えにくく、今後さらに住まいのない人が増えるということだ。

「オリンピック選手村については、当然、私たちは、どのような理由で困ってしまったとしても、もともと住まいがなかった人でも、一緒に利用できる支援であってほしいと考えています。」

これについてはロシアの慈善団体「Homeless」代表のグリゴーリィ・スヴェルドリン氏も指摘している。

「危機が起これば内容に関係なくホームレスは増えます。2008年のリーマンショック時と比較すると、当時は深刻な経済不況ではあったものの、現在の状況のほうがより深刻です。住居のない人の数は目に見えて増加しています。いまとても重要なのは、ホームレスが家のある人と同じように隔離できる一時的な避難施設や場所を作ることです。避難所を設けるというのは世界中で行われていて、人がいなくなったスポーツ施設や寮、ホテルなどが使われていて、とても正しいことだと思います。」

「これはもちろん簡単なプロジェクトではありませんが、やらなくてもいいというわけではありません。パリでは1週間で約3000床が用意されたことから、実現可能です。一時的な避難所は地震やその他災害が起きた時に常に設けられており、つまり技術もノウハウもあるということ。居場所のない人が避難所に入るかどうかは、そこがどれだけ人道的に配慮されているかによります。もし人を人として扱う環境が整っていれば、コロナウイルス大流行でわずかな食事にも困るホームレスの人々は、喜んで支援を求め、パンデミックが終わるまで避難所で大人しく過ごすでしょう。」

レアなケース:日本のコロナとの戦いは他の国と何が違うのか?そしてどこでつまずいたのか?
日本はこの問題をどう解決するか

「まず、平時の支援として、生活保護と言う公的扶助制度と、生活困窮者自立支援制度という就労自立を目指す制度とがあり、基本的にはホームレスの人やネットカフェで生活する人を支援しています。しかし、そういった支援制度がきちんと認知されていなかったり、制度を利用することに社会的なハードルがある(スティグマ性の問題など)があり、制度利用を選択できない人が存在しています。

今回の新型コロナウイルスに関連して、政府の対策は後手に回っていますが、東京都は緊急事態宣言に際して、緊急的にビジネスホテルを2000室確保するなど、対策をとっています。しかし、実際の窓口となる各区との連携があまりとれておらず、また、広報が不十分で情報が必要な人に行き届いていません。」

他国はどう対処しているか

慈善分野の情報によると、英国の一時宿泊所や避難所では約4万人が生活しているという。路上生活者はまだ約5000人いる。ロンドン市役所はホームレスを対象にホテル300室を12週間の予定で借り上げた。そして各区の行政に対し、残るホームレスの収容問題を解決するよう要請した。

ドイツでは同様の目的でスポーツ施設やホテルの利用計画がある。

「家にいて」という呼びかけに対し 行き場がない人は?

米国当局は、コロナウイルスが最貧困層に拡大し、その結果医療施設が飽和状態になる可能性を恐れ、感染症状のあるホームレスを隔離するためにトレーラーやホテル客室を借り上げた。残りのホームレスは避難所に収容している。

政府がホームレス問題に取り組む間も、ホームレス自身はこれまでの生活を続け、さらに困難で過酷な状況に陥っている。ロシア新聞「イズベスチヤ」に寄せられたコメントに「これは世界初のコロナウイルスではない。また私たちにとっては最も大きな問題ではない」というものがあった。確かに、コロナウイルス大流行の中、住まいも支援もない人々にとって最大の問題は、食べるものを見つけ、今日一日を生き抜くことだろう。


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