マイナスの原油価格が語るものとは?専門家の意見

ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)でWTI(West Texas Intermediate)先物の5月物が月曜日の終値で300%暴落し、1バレルあたりマイナス37.63ドルまで落ち込んだ。このショッキングな数字は何を意味するのか、これにより世界経済は大惨事シナリオにどれだけ近づくのか、スプートニクが専門家にきいた。
この記事をSputnikで読む

金融アナリストのアンナ・コロリョワ氏は、今後の状況について、控えめながらも楽観的な予測を語った。「どの産油国も採掘を行う企業に費用を支払わなければなりません。原価はどう計算しても、1バレル30ドルを下りません。企業にしてみれば、価格がマイナスになれば、倒産した方がマシです。身を切って従業員に給与を支払い、さらに生産した原油を買い取ってもらうために購入者に追加の支払いをするよりは、その方がマシです。これは完全に非現実的なシナリオであるため、原油価格の状況は必ず正常化します。もちろん、すぐ近い将来という訳にはいきませんが、私の予測では2ヶ月ほどで、市場に積み上がった膨大な在庫がはければすぐに、原油は値上がりするでしょう。」

1兆ドルで日本の経済は救われるか?
4月9日、OPECプラスの産油国は合計で日量1000万バレルの減産を話し合うビデオ会議を実施した。そのとき、メキシコ以外のすべての参加国が減産提案に同意し、翌日にはメキシコもアメリカと減産を調整した。それなのに、なぜこの合意が効かなかったのか?

アンナ・コロリョワ氏は言う。「完全に均衡を失った原油市場は、事実上、依然として続いています。今の市場には、コロナウイルスのパンデミックによる急激な不安定が原因で、何をしても効きません。たとえ政治化の声明でもです。市場は単に彼らを信じておらず、具体的なタイミングでどうするのが良いかという自らの考えに基づいて行動しているのです。」

ここでもうひとつ当然の疑問が湧いてくる。どうしてこの最悪で恐ろしい石油価格暴落が、ベンチマークだと考えられている北海ブレントではなく、WTI先物の5月物で起こったのだろうか?(編集部注:北海ブレントとWTIは、比重や加工度(精製レベル)の仕様が異なる2つの油種である。)

アンナ・コロリョワ氏は、今回のWTI先物の5月物には具体的な投機的要素があったと考えている。「これは(価格を暴落させ、市場の自然な動きを待たずに、上がるところで稼ごうとする)投機的な売りです。ですから、WTI先物の状況は近いうちに解消すると考えるのが合理的です。つまり、大暴落はおそらく通常の市場の下落に変わるだろうということです。そしてWTI先物の価格も近いうちに元に戻るはずです。」

ただしコロリョワ氏は、コロナウイルスによる世界経済の損失額を計算した人はまだいないため、石油価格を「当てる」ことや石油市場を正確に予測することには、現段階では意味がないと考えている。

コメント