トランプ米大統領は5月19日、テドロスWHO事務局長に宛てた書簡を自身のツイッター上に公開した。トランプ大統領によると、WHOは2019年12月初旬、中国・武漢市における新型ウイルス蔓延について信頼できる報告を無視し、中国の公式見解とは異なるデータが登場した後も、独立機関による調査を行わなかったという。一方、WHOはこの非難を否定し、国連のグテーレス事務総長はパンデミックという困難な時に米国がWHO向けの資金を打ち切ることを批判した。
アメリカ外交政策専門家で、ロシア国立研究大学高等経済学院世界経済・世界政治学部欧州・国際総合研究センターのドミートリィ・ススロフ副所長は、トランプ大統領はWHOに何の根拠もなく不当に責任を転嫁しているとの考えを示した。「WHOの行動原則は自身の使命にのみ基づいている。国際機関であり、中国も含め主権国家が従うべき超国家組織ではない。WHOは、どこかの政府が提出した情報を疑問視し、再確認するためのスパイ活動を行うことはできない。その意味で、米国の行動というのは、現政権、つまりトランプ政権が自国における新型コロナ感染拡大の悲劇の責任を他社に転嫁しようとしている、と説明できるだろう。さらに、トランプ氏は次の大統領選挙のキャンペーンにすでにカードを広げており、この方向性で最後まで押し通す気だろう。」
ロシア金融大学政治学部のゲオルグ・ミルゾヤン助教授は、米国がWHOへの資金拠出を停止し、同機関に罰を与えようとすれば、国際機関全般において米国に代わり中国が支配的ポジションを占めることになると考えている。「トランプ大統領のWHOへの攻撃はワシントンにとって副作用を生むかもしれない。WHOはどうあろうと、世界の新型コロナ対策を調整する主力には変わらない。WHOが間違いを犯した可能性もあるが、その究明や決着、また米国のように資金停止という形で罰を与えるのはパンデミック真っ最中の今ではなく、時間が経ってから行うべきだろう。一方で中国はパンデミック対策として巨額の資金を出して、多くの国を支援している。米国の同盟国はこれを見て、独自の判断を下すだろう。その判断が米国寄りになることはないと思う。」
関連ニュース