シベリア鉄道を使った輸送サービス拡充、新型コロナで日露間の物流にも変化

世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響で、物流業界に変化が起きている。日本からロシアへも例外ではない。航空便の減少により、シベリア鉄道の輸送手段としての存在感が見直され、それに伴う新たなサービスが展開されている。
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日露政府でシベリア鉄道の改善に取り組み

ソ連時代のシベリア鉄道は、「安かろう悪かろう」で貨物の到着時期が読めず、サービスや品質の面でも問題があり、徐々に敬遠されるようになった。しかしこの数年間の、シベリア鉄道の利便性の向上は目覚ましいものがある。それはシベリア鉄道を運営するロシア鉄道の企業努力だけではなく、日露両政府が協力してシベリア鉄道の改善に取り組んでいることも大きい。

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特に日本の国土交通省は、2018年度、2019年度と連続して「シベリア鉄道による貨物輸送パイロット事業」を実施。初年度は日本の各港からモスクワまで、次年度はロシアを通り抜けてポーランドやチェコ、ドイツへと貨物が送られた。いずれも貨物の品質に影響はなく、「定時制」のあるルートであることが証明された。国交省による詳細な2019年度のパイロット事業報告はこちらから閲覧できる。

シベリア鉄道による貨物輸送は、海上輸送の3分の1〜半分の日数で運べ、運賃は航空便の10分の1以下と、スピードとコストのバランスの良いルートである。2019年度のパイロット事業では、航空機では運ぶことのできない危険品(リチウムイオン電池)等を安全に運べることも実証され、鉄道ならではのメリットが明らかになった。

ウラジオや富山にサービス拡充

ロシア・CIS向け輸送に力を入れている東洋トランスは、シベリア鉄道を使った輸送サービスを段階的に拡充させてきた。2019年6月から、小口の貨物を運ぶのに便利なモスクワ向け混載サービス「MOSCOW EXPRESS」をスタート。当初は、日本でコンテナ詰めされた貨物には手を触れずにそのままモスクワまで届けることを想定していたが、ウラジオストクでの通関時に、複数社の貨物のうち1社でも通関に時間がかかると、全ての貨物が止まってしまうリスクがあったため、その点を改善した。

同社の高橋勲(たかはし・いさお)社長は「ウラジオストクで貨物を積み替えることで、通関が切れたものから出発できる体制になり、よりスムーズなサービスとなりました。積み替える為の施設も港の保税エリア内にあり、安全面や作業の時間管理面など、問題がないことを確認できました」と話す。

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今年に入り、極東ローカル都市への輸送ニーズに対応し、ウラジオストクも仕向け地として追加した。さらに4月からは日本側の積み出し港を追加し、従来の横浜からだけでなく富山からも積み出せるようになった。富山から出すと、横浜に比べて6日間も輸送日数が短縮される。これにより富山からモスクワまで20日前後(船便の3分の1)という高速輸送が提供できる。このサービス拡充は新型コロナ拡大を受けてのものではなく、以前から準備していた結果だが、結果的に時期が重なり、鉄道への注目度が上がった。

高橋氏は航空輸送の需要取り込みについて「富山港の追加については、昨年11月に境港からウラジオストク向けのDBSフェリーが運休になった事も大きな要因になりました。開始のタイミングについては、たまたま航空便の運休と重なりましたが、もともと当社ではシベリア鉄道ルートを海上輸送と航空機輸送の間に位置する第三のルートと設定し、航空貨物もターゲットにしていました」と話している。

東洋トランスでは、現在シベリア鉄道を使用していない荷主企業にも、「まずは小口貨物で試験輸送をしてもらいたい」とし、横浜・富山に加え、日本の全ての主要港で貨物を受ける体制を目指していくとしている。

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