来るべきサミットから反中国の機運が生まれるのだろうか。ロシア科学アカデミー極東研究所日本研究センターのワレリー・キスタノフ所長は、日本政府の対外政策戦略にはいかなる「地殻変動」も生じていないにも関わらず、日本外交は現在、ただならぬ状況にあるとして次のように述べている。
一方、トランプ大統領は、新型コロナウイルスのパンデミックに関連し中国への批判を続けている。同大統領は、「今日、中国政府の不正な行為から世界が脅かされている。中国が『武漢』ウイルスの情報を隠したことで、世界中に感染が拡大することになった。このことが世界的なパンデミックを引き起こし、数十万の米国人の命を、そして世界中の100万を超える人々の生命を奪う原因となった」と強調した。
米国外交政策専門家で、欧州・国際総合研究センターのドミートリィ・ススロフ副所長は、次のように指摘している。
「パンデミックによってトランプ大統領は、選挙戦の切り札(なによりも経済の実績)を失った。そのため、短期間で自分に落ち度がないことを有権者に示さなければならない。米国大統領が議長国を務めるサミットの開催と反中国での意思統一という結果がでれば、米国政府が世界での地位を失っているという論調を弱められるかもしれない。もちろんそれは欧州の首脳陣が宣言で中国政府に対する米国の非難を正当だと支持した場合だが」。
「世界はグローバルな乱流のただなかにいる。EU、米国、中国のトロイカ(3者の意)の国際協力で本当に不確実性が生じてしまったからだ。確かに世界は変わり、アジア諸国が立場を強くしていることは認識されている。特に、中国の世界経済と国際関係への影響が増している。
こうした一方で、欧州には依然として強力な親米路線が残っており、国際問題で米国政府との意見の相違が生じることがあっても、これとの協力継続が望まれている。そうはいっても経済の低迷から欧州は、急速に変化する世界での対外経済関係の多様化が突き付けられており、そうした中には中国の新たなシルクロード構想『一帯一路』への統合の必要性も含まれる」。
こうした中国寄りの思考についてクヴァシュニン所長は、なによりまず、EU発展の全体的な方向性に賛同しないEU内のいわゆる反体制派諸国にあてはまると考えている。そこには中国との緊密な関係を維持しているイタリアが含まれる。ギリシャは、中国の投資家のために自国の港湾体制を開放した。そしてハンガリーも同様に「一帯一路」政策への積極的な参加に異議はない。
ユーリー・クヴァシュニン所長は、こうした要因から、G7パートナー国らと意見をすり合わせ、パンデミックの罪は中国にありとする立場を構築するのは米国には容易い話ではないと考えている。
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