東京で差別に反対の平和的デモ行進 スプートニクの現地取材

6月14日、東京で3000人以上の市民の参加した、黒人を支援する平和的デモ行進「Black Lives Matter(黒人の生命は大事だ)」が実施された。デモ行進のメインテーマは黒人に対する人種差別と暴力への抗議ではあったものの、参加者らはLGBTQ+社会や外国人排斥、差別に反対する市民の権利も重ねて求めた。このスプートニク特派員は参加者、組織者側の意見を現地取材した。
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「要求するのは? 正義! それが欲しいのは? 今だ!」

決行日の日曜はあいにくの雨模様だったが、行進開始1時間前にはすでに集合場所の代々木イベントプラザは民族、年齢も様々な人たちでごったがえしていた。幼い子どもを全員ひきつれ、家族連れで参加している人の姿もあった。

東京で差別に反対の平和的デモ行進 スプートニクの現地取材

日本の現行の法律では外国人には抗議行動を実施する権利が認められていないことから、平和的デモ行進の組織者は煽動、政治的発言を行わず、治安維持機関の職員や地元民を侮辱しないよう、参加者らにあらかじめ注意を呼び掛けた。行進が道路の一車線を使い、指定のルートをたどる様子を100人以上の警官が見守り、歩行の安全を保障した。かなりの大人数の参加があったため、組織側は1列に並ぶことのできる人数を3人に厳しく制限し、いくつかの塊で移動するよう指示した。また感染予防策としてマスク着用とソーシャルディスタンスの順守は鉄則とされた。

東京で差別に反対の平和的デモ行進 スプートニクの現地取材

デモ参加者は2時間にわたり渋谷、原宿界隈を練り歩き、プラガードやスローガンで周囲の人に差別問題への注意を喚起した。参加者らは「Black lives matter(黒人の生命は大事だ)、「What do we want? Justice! When do we want? Now!(我々が欲しいのは? 正義! いつ欲しいのか? 今だ!)」など、様々なスローガンを叫んだ。

集合場所に渋谷のNHKみんなの広場ふれあいホール付近が選ばれたのはおそらく偶然のことではあろうが、それでもデモ行進参加者の中にはこのチャンスを逃さず、建物をバックにスローガンと一緒にばっちり写真撮影を行い、これを通して、米国の黒人をめぐる社会状況を説明するのに不適切な黒人アニメ動画を使用したNHKへの不満を表現した。


事のきっかけは?

黒人を支援する平和的デモ行進を発案したのはアフリカ系米国人女性のシエラ・トッドさん。シエラさんは原宿ファッション・イコンで結構有名な存在だ。シエラさんの親しい女友達でやはりこのデモ行進の参加した人の話では、ふたりともアクションが東京でここまで大規模になるとは想像だにしていなかった。デモ行進後の取材にシエラさんの女友達は次のように語った。

(この女性はスプートニクが取材したほかの参加者と同様、匿名を希望)。

「これ、ひょんなことから始まったんです。2週間前、シエラがカレッジの友達とプラカードを持って原宿を練り歩いていたときのことなんですけど、プラカードに目をとめた人たちがこれ、何って、自分たちも参加できるかなって聞いてきたんです。シエラはオッケーだよって、それからSNSでグループを作りました。寝る前に観たら登録した人は50人だったの。それが翌日にはもう300人くらいになっていて。シエラは、これがどんなことになるかわかっていたとは思えないんだけど、今、このすべてに本当にシリアスに取り組んでいる。だから私たちは信じられないくらい大きな反響を得たんだと思う。」

シエラさんの友人はまた、こうも語っている。「同じようなデモ行進をやっている他のグループもあるけど、私たちのこの、『Black Lives Matter Tokyo』は今回が初めての実施なんです。オフィシャルに登録した組織でもないし、近日中にこれと同じことをまたリピートすることはまずありえないと思うんだけど、これを死に絶えさせはしない。私たちのソサエティーを支援する計画をたてていて、今回のデモ行進はこの先何か大きなことを達成するためのよい出発点になったんじゃないかと思います。」

東京で差別に反対の平和的デモ行進 スプートニクの現地取材

かなりの数の参加者があったものの、その圧倒的大半はやはり外国人だったことは指摘しておかなければならない。これについて組織側の女性は次のような見解を表している。

「一緒にやろうと来てくれた日本人たちにとても感謝しています。参加者した人は今回はそう多くなかったかもしれないけれど、これで注目を集めたら、みんな近寄ってきて、何が目的なのか尋ねようとするでしょう。これこそ、私たちが到達したかったことの全てだと私は思います。それに日本にも差別の問題はやはりあるでしょう。同じ差別の問題であっても、ここでは米国とは違う形で表出しているだけのことで、もちろん日本ではそれがゆえに警察は人殺しはしません。それでも人種差別であることには変わり在りません。これは全くどこにも同じく存在するのです。アフリカ系米国人であって、こうして日本に滞在していることがとても嬉しいですし、ここで得ているすべてに感謝しています。ここでは何も怖くないですから。」

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組織側のひとり、別の日本人女性はこのアクションに加わることが自分自身にとってどうして大事なのか、英語で語ってくれた。

「日本人は自分の国には人種差別などないと思っていると思います。それは民族的には日本は単一民族だからです。そういう人たちは人種差別はアメリカ人の問題だと言います。でもこれはアメリカ人だけの問題ではなく、まさしく日本人の問題であるわけでもなく、世界全体の抱える問題なんです。LGBTQ+の人たちの状況もこれに似ています。多くの日本人はこうした人たちは日本にいないと思っています。自分の知る限りではそんな人には出くわしてこなかったというのが彼らの根拠なんですが、実際はそういう人たちはちゃんと存在していて、支援を必要としているんです。」


「怖い、黒人にはなりたくないってさ、それどういうこと?」

黒人との話から、それぞれが感じる安全の概念が異なることが見えてきた。.あるアフリカ出身の女性はスプートニクの記者に日本で自分は安全だと感じることができないと打ち明けてくれた。

「日本で私が感じる人種差別はかなり特殊なものです。例えばね、面と向かって『怖い。触りなくない。こんなふうに黒くなりたくない』っていわれるんですよ。これってどういうこと? 職場でさえ、こうした先入観を感じています。

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安全、安心感を口にする場合、自分たちにとって安全とは何なのかを理解していることが大事です。確かに米国での人種差別は身体への暴力になりやすい。でもそれとは別の、精神的に害を及ぼす形もある。そしてそれが毎日起きている。その精神面についていうならば、私は日本にいて完全に安全とは感じられないんです。」


ハーフ、外国人に対する先入観

白人米国人で日本滞在もかなり長く、今回のデモ行進の組織の一員というある女性は、日本にいて時に辛いと感じるのは黒人だけでなく、 ハーフもそうだと語っている。

「友達にここで差別に苦しんでいる人がいますよ。私も差別的な視点を持つ日本人とたくさん話をしてきました。外国人の目線で見れば日本に住み続けるのは難しい。でも私の場合は白人という有利な立場がありますからね。私だって無理解に突き当たることはあるけれど、黒人の友人に比べたらずっと楽ですよ。ハーフで日本で生まれ育った友人で片親が黒人という人がいます。こういう人は自分の背後で他人が自分のことをいろいろ噂するのを聞かされているんですよ。こんなハーフの親は日本人とはかかわりないねとかね。それからはっきりと差別の形をとってないんだけど、よく考えたらこれ、実際、差別でしょう、というものもあります。だからこそ、一緒に克服していくためにはこうした差別のケースを洗い出すことが大事なんです。」

ハーフの黒人女性はこの問題についての自分の意見を次のように語っている。

「自分はハーフですので、これは私にも近い問題です。個人的には日本に住むことは難しくありませんでしたが、難しい思いをする人がいることを知っているので支援したいと思いました。」

この女性の日本人の友達たちは、このデモ行進に参加したのは日本に何らかの変化を求めているからではなく、今米国で起きていて、日本のマスコミは相変わらずほとんど報じていないことに対して、連帯の意を表そうとしたからだと語ってくれた。


「日本でならゲイとして安心して生活できます」

こちらが予期しないような理由でデモに参加したと話してくれたのはホモセクシュアルの日本人男性だった。

「僕はアメリカに住んだことはないけど、あそこから友達もいて、またはニュースもいっぱい見てきて、また、やっぱりLGBTの歴史の部分も黒人問題と一緒になっているところがあるので、仲間として一緒にスタンドアップしたいなと思いました。

日本では海外みたいに面と向かって攻撃的だったり、罵声を浴びるということはないと思うんですけど、きっとそのように表現しないだけで、差別する人達はいることはいるし、逆に出てこないから、それに対してリアクションしていくのも難しいんじゃないかなと。普段の生活の中では安心して生活できます。多くの人々が知らない、無関心だったり、無知だったりするのはある意味悪いんだけれど、安心に生きるとしては怖くはないです。」

それでもこの男性は、日本のLGBTQ+社会の状況はまだまだ改善の余地があるとは思っている。この問題については公式的なレベルでさえ極めて差別的な見解が聞かれることがあるからだ。

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「多くの国が日本に学ぶところはある」 

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デモ行進参加の黒人たちの一部は日本人と一緒にいて心地良いとはいえない思いも味わうという語っていたが、それでも日本にいる自分の状況をかなりポジティブにとらえている人だってやはりいる。ある黒人男性はこんなふうに語ってくれた。

「日本人は素晴らしい人たちだよ。僕らにとても良くしてくれる。だからここの暮らしが気に入っているんだ。僕はね、たくさんの国にとってお手本になることが日本にはあると思うよ。ここでは米国で起きているようなことはない。多くの国の政府がこのデモ行進を見たら、これは無視できない大きな動きだ、これはなんとかせねばならないとわかるだろう。だってさ、僕らにはみんな同じ血が流れているんだよ。肌の色は何の意味も持たない。僕らの呼びかけていることは全く普通で当然のことじゃないか?」

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Публикация от Christina (Jaz) Whalen-Bacon (@livingrootedindivinelove)

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