トランプ氏は固い決意
トランプ氏は2年前にカナダで開催されたG7サミットでロシアをG7へ復帰させたい意向を初めて表した。そして昨年フランスで開催されたG7サミットでも同じ主張をした。だがトランプ氏の提案がG7の他のメンバー国の熱意を呼び起こすことはなかった。主要国首脳会議は1970年代初頭に立ち上げられた世界の政治と経済を主導する国の非公式クラブであり、共通の立場はあるが憲章はないためロシアを除外することは不可能だ。2014年、クリミアのロシアへの再統合とウクライナ東部での出来事の後、日米欧7カ国は抗議の印としてロシアで開催予定だった主要8カ国(G8)サミットを欠席し、その後のサミットへロシアを招待しなくなった。
しかしトランプ氏はロシアを招待する意向を表している。トランプ氏は今月3日、ラジオ番組でロシアを招待する意向を再確認し、「これは常識の問題だ」と述べ、「G7サミットの半分はロシアに関するもので、プーチン大統領が参加していれば問題解決ははるかに容易になっていた」と述べた。
ロシアの立場
ロシアの正式な立場は不明だが、拒否していないことは確かだ。ロシアのペスコフ大統領報道官は記者団に、G7への招待に応じるためには「さらに多くの情報を得る必要がある」と述べた。ロシア外務省のザハロワ報道官は「G7サミット拡大案は原則的に正しい方向に向かっている」との考えを示している。
またこのG7へのアプローチが変わることは恐らくないだろう。ロシアはいずれにせよG7の集団的妨害行為、制裁、その他の抑止措置がロシアに浴びせられたはずだと確信している。一方、クレムリンはトランプ氏を冷たくあしらい、西側との対立を悪化させるのは逆効果だと考えているようだ。
プラスしかない?
トランプ氏はロシアに敬意を表すことで2016年米大統領選におけるロシアの干渉に関するトランプ氏へのすべての非難を退け、自身の手が対露外交ために解き放たれたことを明確に示した。またウクライナがトランプ氏に懸念を抱かせている。さらにウクライナにはトランプ氏に反対する米民主党を支持する者たちがおり、それもトランプ氏を苛立たせているほか、なぜウクライナを支援するのかという納税者への答えも未だにない。
そして最後に、トランプ氏はロシアや他の影響力のある国を加えることによるG7拡大を提案し、1年前にフランスで開催されたサミットで起こった「6対1」の状況を回避し、米国には唯一無二の同盟国はないことを示したいようだ。
そしてもちろん、ロシアと米国には戦略的安全保障、石油価格、中東など議論すべきことがある。
一言で言えば、トランプ氏の提案は魅力的だが、中国がテーマという明らかな制限もある。
中国は鉄則
ロシア外務省はトランプ氏の提案について、中国が参加せずに世界的に重要な真剣な取り組みを実現するのはおそらく不可能だという、つかまえどころのない声明を表している。そして、これは理解できる。トランプ大統領が提案した今年のG7サミットの反中国議題は、過去30年間のロシアの外交政策と完全に矛盾しているからだ。
米国とはすべてがその逆であり、見通しは悲観的だ。そして中国との関係の性質を変えることについて話が及ぶ可能性はない。
別の問題は、急速に「冷戦」状態に転げ落ちている米中関係を安定化させるプロセスにおいて、ロシアが潜在的に仲介役を果たせる可能性があるということだ。しかし、中国と米国はそれを必要としているのだろうか?
ロシアを利用して中国を核軍縮交渉に参加させようとするトランプ氏の試みは無駄に終わった。ロシアは中国との関係を損なうつもりはないが、これは米国との対話を中止するものではない。結局のところ、露米首脳は、プーチン大統領とトランプ大統領が出席する今秋に開かれる国連安全保障理事会首脳会議で会う可能性がある。そして同会議も、あらゆる問題を議論するための場となることができる。