日本がトランプ氏に反対?

日本政府はG7サミットにロシア、オーストラリア、韓国、インドの首脳を招待するというトランプ米大統領の案に異議を唱えた。菅官房長官は記者会見で最終的な開催形式を決めるのはサミットの議長国としての米国としながらも、G7そのものの枠組みの維持は極めて重要とする日本の考えを示した。日本のこの声明の奥底には、G7の場に韓国の文在寅大統領を呼ぶことには同意できないということがまずある。ただし本質的には日本はトランプ氏に対して反対を表明したことになった。
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5月末、トランプ氏はG7の秋までの延期し、その構成メンバーを拡大する決定を明らかにした。トランプ氏はその理由として、G7は今の世界を十分に代表しておらず、「時代遅れ」となっていると説明していた。

「世界はグローバルな乱流のただ中」 米国VS中国 G7で欧州は誰に味方する?
トランプ米大統領のこの提案には広範な反中国同盟を築く方法を見つけ出したい要求がかなり明確に現れている。少なくとも提案は中国側にはそう理解されたため、6月3日、中国外交部公式報道官はトランプ氏の発案を激しく批判した。

賛成、反対、どちらともいえない…

G7の新形式には欧州連合(EU)、英国、カナダ、フランスも反対を示した。クリミアの再編成後、この非公式のクラブの外に置かれたロシアのG7復帰が気にそわないという国から、選ばれし世界大国のクラブというメンバーステイタスをなんとか格下げさせたくないという国もあった。そこに今、日本も多少の遅れをとって反対の立場を表明していることが明らかとなった。日本は朝鮮半島の調整と、戦時中の慰安婦問題の賠償金をめぐる韓国の立場と相いれないのだ。

そうした一方でインド、韓国、オーストラリアはホワイトハウス側の提案を前向きに受け止めた。

中国とより緊密な、ほぼ同盟に近い関係を持つロシアはこれにかなり自制の利いた反応を示した。露外務省のマリヤ・ザハロワ公式報道官は「『G7』は現在の形では『きわめて時代遅れの国の集まり』であり、『世界で起きていることにしかるべき形で対応できない』という米大統領の発言を我々は確認した。こうしたアプローチには我々も同感である」と述べる一方で、この件に関しては「国際政治、経済問題を西側諸国のエグゼクティブ・クラブの枠内で解決する」ことは不可能というロシアの立場はすでに表明されており、一例として、中国の参加を抜きにして「グローバルな意味を持つ、深刻なこと初め」はほぼ実現不可能と指摘した。

ロシアはG7に復帰するのか?
結果として、理由は様々であるものの、米国に近い同盟国はすべてトランプ氏の提案を退けた。この反中国というテーマだが、コロナウイルスの感染の発生問題にしろ、貿易摩擦や人権問題にしろトランプ氏の選挙キャンペーンの主要テーマとなるべくして出されているものだ。拡大形式でのG7サミット開催が実現すれば、選挙前に重要度の高い外交政策ショーとなっただけでなく、実際、反中国同盟創設の出発点となりえたかもしれなかった。

反トランプ同盟?

今の状況はどうやらG7内で形成されつつあるのは反中国戦線ではなく、反トランプ同盟であって、それもその構成員はG7内でもトランプ氏に近い同盟国という状態。それに中国の脅威とはいえ、米行政府のとる行動が従来の西側世界を分断している状況では、脅威度もそれほどではない。

さもなければ、西側世界での米国支配の主要ストラクチャーであるNATOをマクロン仏大統領がすでに2度も「脳死状態」と繰り返すことなど理解は難しい。また、メルケル独首相も「南ドイツ新聞」からの取材の中で、米国が世界の大国の役割をこの先もう演ずる気がないのであれば、独の政治家らは「極めて根本から考え直さねば」ならないと発言している。この発言は、ドイツが肩代わりする独駐留米軍費があまりに少ないと主張するトランプ氏が、駐留軍の一部撤退を決定したことへのドイツ当局の返答だ。

次のサミットでは、G7指導者らがトランプ氏を元の大西洋の連帯の道に戻すことができるのか、それとも西側諸国が米国を横目で見ずに行動できる、新たな国際秩序の方向に初めて動き出すのかが決まる。

もし後者であれば、日本が対露関係、対中関係においても、より独立した路線を進むことも期待できる。これは日露の政治対話にも反映されてくるだろう。

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