そのエイズ患者は、抗レトロウイルス薬とニコチンアミド(ビタミンB3)を積極的に服用することで完治したという。これらの薬は、感染した細胞に潜伏するHIVウイルスを強制的に覚醒させることができる。HIVウイルスは増殖を開始するものの、すでに脆弱な存在になっているため、免疫に破壊される。
この手法で完治したのはサンパウロ出身のブラジル人男性患者(36)。治療の過程でウイルスの数がゼロになり、2019年3月に治療を中止した後も血液中のHIVは確認されなかった。男性のHIV抗体のレベルも非常に低くなっており、これはリンパ節や腸には感染した細胞がいないことを示している。
しかし研究者らは、このサンパウロの患者が本当に完治したかどうか正確に把握しておらず、患者の体の状態をより厳密に分析する必要があるとしている。
抗レトロウイルス薬の服用をやめた患者のほとんどは、数週間以内に再びウイルスが発生し始める。例として、この薬を服用していた米ミシシッピ州の子どもの患者は完治したと診断されたものの、その2年後、体内にウイルスが再び出現した。
これまでのところ、HIVの完治例は2例しか報告されていない。米国のティモシー・レイ・ブラウンさんと英ロンドン出身のエイズ患者は、血液がんを治療するため骨髄移植を受けたところ、HIVの完治が確認された。しかしこの手法は必ずしも成功するとは限らず、高額でリスクの高い方法だという。
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