何が起こったのか?
アメリカ議会は、トランプ大統領がアメリカを世界保健機関(WHO)から正式に脱退させたという通知を受けた。ニュージャージー州代表の上院議員ボブ・メンデズ氏がTwitterで伝えた。
CNNが国務省公式代表の情報として伝えたところによると、アメリカはアントニオ・グテーレス国連事務総長への通知を行い、決定は2021年7月6日に発効するという。
アメリカは4月にはすでに新型コロナウイルスの拡散に関してWHOの批判を始めていた。当時、大統領は、WHOは中国に配慮しすぎており、アメリカに十分な配慮をしていないと述べたほか、WHOに対して中国からの独立性を示す証拠を示し、必要な改革に関するアメリカの要求を履行するよう求めた。
加盟はできるが、脱退はできない。WHO憲章には脱退に関する条項がない
WHO憲章によると、国や機関が提供した出資金や拠出金は返還されない。また、WHO憲章には加盟国の脱退に関する条項がそもそもない。加盟した国は加盟国であり続けるのだ。
しかし、アメリカではWHOを脱退した場合の行動が規定されている。1948年のアメリカ議会両院の決議によると、脱退を希望する場合、アメリカは1年前までにその旨を通知し、未払いの資金を全額支払わなければならない。
保健問題の解決よりも国家間対立
政治がWHOの対立の原因になったのは初めてではない。現在トランプ大統領が抱いているWHOと中国への疑念は1949年に起こった同様の出来事を彷彿とさせる。当時、ヨシフ・スターリン率いるソ連はWHOと国連に対するアメリカの影響が大きすぎ、両機関は親米だと考えた。そのため、ソ連とブルガリア、ルーマニア、アルバニア、ポーランド、チェコスロバキア、ハンガリーといった社会主義ブロックの国々は、自分たちの国こそが第二次世界大戦で最も大きな人的物的犠牲を払ったにもかかわらず、WHOがこれらの国に十分な配慮をしていないと訴え、WHOから脱退した。
ソ連とその同盟国のWHO脱退の決定は、それらの国が義務的拠出金を支払わなかったため、WHOの財政に影響した。それにもかかわらず、当時のブロック・チショルム(カナダ)WHO事務局長は、ソ連の加盟ステータスを「non-active」に分類することで、ソ連を加盟国として扱い続けた(この決定が後にスムーズな復帰への道筋をつけることになった)。
復帰のチャンスはあるのか?
ヨシフ・スターリンの死後、ソ連ではニキータ・フルシチョフが政権に就き、国際機関に対する政策も変わったことで、1956年には社会主義ブロックのすべての国がWHOに復帰した。今回もアメリカに復帰の道を残すことで、同じようなことが起こるかもしれない。
アメリカ大統領候補のジョー・バイデン氏はすでにこのシナリオを選挙公約に入れている。
WHOに資金拠出しているのはどこ?
WHOの2020~2021年の予算は48億ドルである。そのうち約20%が194の加盟国の義務的拠出金でまかなわれる。拠出金の金額は各国の支払能力に応じて決定される。トランプ大統領によると、2019年にWHOはアメリカから4億5200万ドル、つまり他国よりもずっと多額の拠出金を受け取ったという。
ちなみに、同時期の日本の拠出金は40,975,800ドルと41,836,292フランであり、中国は57,439,805ドルと58,646,041フラン、韓国は10,846,820ドルと11,074,604フランである。2つの通貨に分かれているのはWHOのルールによるものだ。一加盟国の年間拠出金が20万ドルを超える場合、その国の拠出金は半分を米ドルで、残り半分をスイスフランで計算することになっている。
義務的拠出金の金額は極めて大きいが、予算の大部分を賄っているのはWHO加盟国による任意拠出金であり、国連の基金や庁、非営利団体や個人からの寄付である。国連ドイツ協会(DGVN)によると、2010~2011年のWHO予算に占める先進10ヶ国の割合は60%を超えていた。この10ヶ国にはアメリカ、日本、ドイツが入っている。2012~2013年のWHOの最大のドナーはビル&メリンダ・ゲイツ財団だった。WHOに出資した金額はアメリカよりも大きかった。