元特務機関の職員、フェイクニュースを戦争に利用しているとして西側諸国を非難

フェイクニュースはどのようにして国際紛争を引き起こすのだろうか?自著「Gouverner par les fake news」(フェイクニュースで統治する)の中で、スイスの元特務機関職員、ジャック・ボー氏は西側諸国はフェイクニュースを利用していると批判している。
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今から3年以上前、エマニュエル・マクロン氏が大統領に選出される数ヶ月前に、当時、政党「共和国前進(REM)」の事務総長を務めていたリシャール・フェラン氏は、仏ル・モンド紙に、「ロシアがフランス大統領選を不安定化させることは許さない!」と題する論文を発表した。その中で、フェラン氏は「ロシアの2大国営メディア、ロシア・トゥデイとスプートニクは(中略)、連日フェイクニュースの発信と拡散を行っている」と指摘している。一方ちょうどその頃、フランソワ・フィヨン氏(2017年の仏大統領選挙でのマクロン候補の対抗馬)が妻の架空雇用をめぐる騒動に巻き込まれた。これに関して、スイスの元特務機関職員で、国連、そして北大西洋条約機構(NATO)での勤務経験を持つジャック・ボー氏は、アメリカもすでに利用していたロシアの介入という論拠は、マクロン候補の立場をさらに強めるものとなったとの見方を示している。これは敵のイメージを作り上げることについて述べたものなのか、それとも選挙前キャンペーン最中のPR合戦について述べたものなのか?

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ロシアからの脅威を利用する方法は、イエローベスト運動の危機においても、ヨーロッパにおける選挙でも、歴史あるメディアや研究者、政治家らによって利用しされ続けるだろう。ロシアの脅威はそれほど西側に重くのしかかっているのだろうか?ソ連からの脅威について長年、研究してきたジャック・ボー氏は、これに対し、「まったくそのようなことはない」と述べている。著書「フェイクニュースで統治する」(2020年8月27日Max Milo出版)の中で、筆者のボー氏は「事実の歪曲」について言及している。

著書の中でボー氏は、特務機関、外交官、政治家、メディアを激しく非難し、西側諸国が最近数十年の間に捏造してきたフェイクニュースを詳しく精査している。著書の中にケネディ元大統領暗殺についての新たな情報はないが、ここには世界の戦略的現実を理解するための鍵が示されている。ボー氏は、「我々に情報を与えようとすることに対する根拠のある疑問を払拭する」ために一連の問題を分析している。

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2016年の米大統領選の際に現れたフェイクニュースという用語は、ドナルド・トランプ候補に対する煽動的な辛辣さをもって定期的に用いられた。ジャック・ボー氏は、こうしたでっち上げは然るべく分類すべきだとし、同じフェイクニュースの中でももっとも危険なのは、「読者の知覚を歪め、何らかの政治方針を引き出すために、事実の本質について虚像を作るような事実を操作するものだ」と言う。

シリア、イラン、ロシア、ベネズエラなど多くの国々が次々と、ヨーロッパ諸国や米国が広める虚報、フェイクニュースの標的となり続けている。では、フェイクニュースの目的とは一体なんなのか?「フェイクニュースはなんらかの政治方針を作り出す助けとなっている」、つまりフェイクニュースの目的は、敵のイメージの構築、軍事作戦の実施、体制の変換などを引き出すことだとボー氏は指摘する。コリン・パウエル元国務長官による国連での信じがたい嘘に満ちた演説とともに行われた2003年の米軍によるイラク侵攻はその一例に過ぎない。

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スプートニクからの取材に応じたジャック・ボー氏は、「世界における紛争の多くはフェイクニュースによって勃発している。フェイクニュースは、政府が世論を自分たちの考えに動かす助けとなっているのである。フェイクニュースの問題点は、問題に対する我々のイメージを歪め、人々の意思を麻痺させようとしていることだ。国民の同意のないまま行われている戦争がある」と述べている。

イランのガーセム・ソレイマーニー司令官の殺害事件についても同様のことが言える。ソレイマーニー司令官は2020年1月3日、アメリカの空爆によって殺害されたが、司令官殺害の公式的な理由は何だったのか?トランプ大統領はこれについて、「司令官は中東にある4つの米大使館への攻撃を準備しており、“差し迫った脅威”があった」と説明した。しかしその4日後、大統領の見解は一転、殺害の理由はソレイマーニー氏の“恐ろしい過去”にあると述べた。

特務機関やメディアはどうなのか?

2011年にニコラ・サルコジ元仏大統領と作家ベルナール・アンリ=レヴィがリビアで行なった冒険的な行動もそうであるが、軍事介入の責任を取るのは常に政治家である。しかしその罪は政治家だけにあるのだろうか?特務機関の役割はどのようなものなのだろうか?フランスの情報機関DGSE、英国の秘密情報部M16、米CIAはどうであろうか?ボー氏は、偵察について、「戦略的決定を下す者にとっての基準となるべきものであり、それこそが偵察の機能である。つまり、偵察というのは、現状を伝えた上で、判断を委ねるものだ」と述べ、西側の特務機関は「事実に基づいて、客観的に状況を分析していない」という欠点があると指摘する。

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ボー氏は、それ以外の方法では戦争を起こすことができず、グローバル戦略の損失となる戦法に頼っている外交官や軍人の「知的柔軟性のなさ」を批判している。フランスのルグリア陸軍大佐も、2019年にフランスの月刊誌「Revue Défense Nationale(国防ジャーナル)」の中で同様の見解を示し、空爆の実施という結論に帰結した有志連合軍の軍事戦略について、市民に西側式の解放を思わせうる忌むべきイメージを植え付けるものだとして批判した。

またジャック・ボー氏は特務機関や政治家だけでなく、無意識に西側政府に追従しているメディアをも批判し、長い歴史を持つフランスのメディアもその批判の対象に含めている。ボー氏は彼らは事実の一部を隠しており、ベネズエラの一件では、「国際法や法の支配の原則に違反している企業を支援している」と非難し、情報源の選別に問題があると指摘している。

ボー氏は言う。「反政府勢力に情報を求めることに反対はしないが、こうした情報は、厳密な意味での情報と見なすことができないということを理解する必要がある。また情報リソースの別の面を見ることが必要だ。シリアの場合、我々に情報を提供しているのはほとんどの場合が反政府側である。反政府側とは何者なのか?この場合はジハード主義者たちである。つまり、ある意味でメディアは一種のジハードのプロパガンダを行っていることになるのである」。

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