「男性は基幹的な仕事、女性は補助的な仕事という固定観念が影響している」 時代遅れの考え方が日本社会を減速させる

子育てや補助的な仕事なら女性もできるが、女性に経営や政治活動を任せることはできない。日本社会は長らくこうした考え方とともに生きてきた。現在、キャリアを志す女性は増えているが、上の世代の不理解や既存のステレオタイプに直面している。女性に対する社会の障壁にはどんなものがあるのか?それを女性はどうやって克服するのか?女子中高生にIT業界を紹介するWaffleの共同設立者、田中沙弥果さんにスプートニクの特派員が話を聞いた。
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平等からは程遠い

世界経済フォーラム(WEF)の年次報告書、2020年ジェンダーギャップ指数が発表され、日本は121位だった

この報告書では、①経済参画と可能性、②政治参画と可能性、③教育水準、④健康と寿命の4つのカテゴリー、14項目について、153ヶ国のランキング評価が行われる。

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日本は伝統的に「教育」と「健康」のカテゴリーでは上位にあるものの、政治と経済に参画する女性の数は記録的に低い。日本の国会議員に女性は依然として少なく、内閣には女性閣僚が1人しかない。権威ある職業の多くでジェンダーギャップは依然として極めて大きく、その理由は決して女性にイニシアチブが足りないからではない。


夢を叶えたければ、男性に生まれるしかない

2016年の日本の医師に占める女性の割合はわずか21.1%だった。これは経済協力開発機構(OECD)加盟国で最低の水準である。どんなに一生懸命勉強し、完璧な成績をとったとしても、日本の女の子の医師になりたいという夢は叶わないかもしれないのだ。

2018年、東京医科大学をめぐり、大きなスキャンダルが発覚した。男子学生が大多数になるよう、同大学が女子受験生の入学試験の点数を体系的に引き下げていたことが複数の米欧メディアの知るところとなった。

この問題を検討する記事を書いた多くの日本人ライターは、トップの時代遅れの考え方が原因だと口を揃える。とはいえ、法律を制定するのがほぼ男性という中で、状況を女性に有利に変えるにはどうすればよいのだろうか?


女性国会議員の数は世界平均から20年遅れ

日本における女性の政治参画は著しく遅れている。国会の女性議員比率は衆議院9.5%、参議院15.7%。下院で比較すると191カ国中156位だ(2016年1月現在)。10%にも満たない国は38カ国あるが、日本はそのうちの一つということになる。

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現在、世界平均は約22%、北京で世界女性会議が開かれた1995年の11%から倍増している。日本では衆議院は1993年総選挙の2.7%(14人)から2014年総選挙の9.5% (45人) へと3倍以上に増えてはいるものの、現状は20年前の世界平均といえる。

女性の社会参画の成長を阻害する要因は少なくとも2つある。ひとつ目は、決まりきった家庭内での役割分担だ。これが女性の負担を増大させ、家庭外の仕事に使える時間を削っている。

男性議員は家事から解放され、家庭は政治活動のための有効なリソースとなっている。しかし女性の場合は逆だ。子育てや家事はなくならず、企業や政治でのキャリアを阻害する。

ふたつ目は社会に存在するステレオタイプである。「政治は男性の仕事」という偏見が邪魔をして、女性候補者は有権者の支持を得にくい。

そのため、古い世代が変えられなかった、あるいは変えようとしてこなかったことを、今度は若者の社会団体が実現しようとしている。


問題は学校から?

9月4日、2020年7月31日に発表された第5次男女共同参画基本計画素案に対し、内閣府男女共同参画局の橋本内閣府特命担当大臣(男女共同参画)にユース提言書が提出された。提言の策定には複数の若者社会団体が参加した。Voice Up Japan、Japan Youth Platform for Sustainability、プラン・インターナショナル・ユースグループが共同で策定した。

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女性の社会的地位を改善するために若者たちはどんな提言をしたのか。スプートニクの特派員がIT企業家でWaffle共同設立者の田中沙弥果さんに話を聞いた。

スプートニク:日本を含む世界中で、IT分野は男性優位と考えられています。田中さんは女性であることによって学業や仕事で何らかの障害に遭遇したことはありますか?

田中沙弥果: 「個人的には小学生のときから体験しています。もともと小学生(大阪の公立)の頃から自分がやりたいことは積極的に手を上げるタイプでしたが、中学(大阪の公立の共学)になると消極的になりました。リーダーシップが求められる場面において、本当はやりたいけど手を上げるのを辞めてしまいました。なぜなら、中学ではリーダーシップを発揮するポジション(生徒会長や応援団長など)は男子生徒が前に出て引っ張っていくことが当たり前の文化で、女性に求められることはクラスの容姿が整っていること(クラスで一番かわいい子など)、あるいは成績が飛び抜けて優秀であること、のような要素のほうが重要視されていたからです。

日本社会全体をみても、共学校では「生徒会長は主に男子生徒が行っている」という回答が3分の1ありました。このように、教育を提供する側が意図する・しないに関わらず、学校における制度や慣行、教員の言葉や態度などを通して、性差の役割を学び取ってしまうことが日常に蔓延っているのが現状です。

また、社会に出てからも体験しています。先日「2020年度までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」との目標を先送りとなったことが話題になりましたが、日本の女性の管理職比率はワースト3位(OECD平均32.5%、日本14.9%)、女性役員比率はワースト2位(OECD平均25.4%、日本8.4%)です。

このように、日本ではジェンダーギャップ指数が121位ではありますが、10代・20代の多くは前述のような働き方や管理職の男女割合に対する違和感を強く持っています。」

男性は基幹的な仕事、女性は補助的な仕事という固定観念が影響している

スプートニク:田中さんは、現代の日本に男性と女性の職業について何らかの固定観念があるとお考えですか?IT分野に関するそのような固定観念はありますか?

田中沙弥果: 「職業、IT分野いずれについても固定観念があると考えています。

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例えば日本には総合職、一般職と呼ばれる企業の採用コースがあります。総合職の女性比率は、増加傾向にあるものの22.2%、一般職の女性比率は82.1%(*1)であり、非常に大きな差があります。男性は基幹的な仕事、女性は補助的な仕事という固定観念が影響しているものと考えます。

また、IT分野に関しては、日本におけるITエンジニアの女性比率は14.3%です。

その原因としては、学生時点での興味・関心の低さが指摘されます。日本のICT関連の仕事につきたい15歳の女子学生の比率は3.4%と、OECD加盟国の中でもワースト1位でした。

このように、男女への固定観念は10代から始まっています。女子学生の自己実現を応援したり、ジェンダー平等な社会を形成する上で、社会がこのような固定観念を変えていくことが必要です。Waffleは進路選択前の女子中高生にIT教育とエンパワメントが重要であるという信念のもと、学生へのITの機会を提供しています。」


それぞれの国にそれぞれの道があり、それぞれの社会がそれぞれのスピードで成長していく。昨今、日本では、家庭で自分を発揮するだけでなく、男性と対等に企業で社会のために働いたり、政治に取り組みたいと考える女性が増えている。もう変化は避けられないのだ。

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