2020年ノーベル平和賞、大統領には授与されず この結果を専門家はどう分析したか

ノルウェーのノーベル賞委員会は2020年の平和賞を、飢餓との闘いに貢献した国連世界食糧計画(WFP)に授与すると発表した。21世紀の今もなお、最貧国や世界の紛争地で、飢餓に苦しむ人々がいることから、この問題が社会に注目されるべきものであることは疑いようもない。しかし、ノーベル賞委員会はなぜ今年、ドナルド・トランプ米大統領、ウラジーミル・プーチン露大統領、また候補者として今年再び名が挙がったスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんなどの候補者を差し置いて、世界食糧計画の貢献に目を向けたのだろうか。
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政治学博士で、国際研究協会の会員であるグリゴリー・ヤルィギン氏は、この問いに対する答えは明白だと指摘する。「今挙がったすべての人物はきわめて高い政治性を持っており、どの候補者を選んでも、なんらかの政治路線を支持しているように捉えられる恐れがあるのです。かつて米国のバラク・オバマ前大統領が平和賞を受賞しましたが、彼が平和のために行った個人的な貢献やその評価については、多くの人々にとって納得できないままとなっています。気候問題をめぐる世界的な論争がそれほど激しいものでなければ、環境分野での尽力を評価してグレタ・トゥーンベリさんに賞を授与するという理由づけにも説得力があったかもしれません。一方、世界保健機関(WHO)と新型コロナウイルスの感染拡大を背景にした同機関の重要な役割について言えば、非常に危険なウイルスとの戦いにおいて十分に効果的な機能を果たせなかったと考えている人がいます。ですから、ノーベル賞委員会は、政治からも、意見の対立からも距離を取り、国連の世界食糧計画に賞を与えるという賢明な決断をしたのです。世界食糧計画は長年にわたり、世界のさまざまな地域で非常に重要な活動を行なっています。しかもいかなる政治的な争いにも関与していません」。

またグリゴーリー・ヤルィギン氏は、ノーベル平和賞は、定義としては、政治と結びついたものであるが、現在、国連世界食糧計画の活動に目を向けることはより重要なことだと指摘する。というのも、新型コロナウイルスによる困難な状況下で、食糧問題は深刻化しているからである。

「世界が飢餓の問題に着目していることは、まさに今、過去にないほど時宜にかなったことです。天候問題と食料安全保障の問題は、特定の国、そして多くの地域でますます深刻なものになってきています。研究者たちは、食糧安全保障の問題の特徴、そしてそれがどのような戦略的意義を持つのかを理解しています。しかしノーベル賞委員会は国連世界食糧計画に平和賞を授与することで、世界全体に警鐘を鳴らし、この重要な問題とその解決への注目をより明確なものにしたのです。核軍縮も全世界にとってのグローバルな課題ですが、食糧安全保障もまた、もっとも重要な優先的課題なのです」。

世界食糧計画は、自然災害や人為的災害、軍事紛争などの犠牲者に食糧援助を行う世界でもっとも大規模な国際的人道機関である。

ノーベル賞委員会が平和賞を発表した後、ツイッターの世界食糧計画のページには、日々、生命の危険を冒しながら、世界中で飢餓に苦しむ1億人以上の大人や子どもたちを救うために食糧を届ける職員たちの活動が認められたことに対する感謝の言葉が投稿されている。

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